農林水産省は、これまで選定してきた「棚田百選」に変わり、「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」を選定。全国44道府県から271地区が選ばれ、大分県からは10地区、うち半分の5地区が別府市から選ばれた。これまで、「棚田百選」に選ばれていたのは、内成地区だけだったが、今回は、内成地区に加え、堂面棚田、天間棚田、大所棚田、東山棚田が選ばれた。
山の地形に沿って続く段々畑である棚田は、美しい光景を作り出す一方で、高地で道幅が狭いため農業用機械が入りにくい場所が多く、農業には少し厳しい環境にもある。しかし、棚田は食料生産はもちろんだが、洪水防止、土砂流出防止、水資源かん養など多面的な機能を持つとされているため、農水省では、棚田を貴重な遺産として保全していこうと新たな認定を行った。
認定基準は、市町村が推薦する棚田で▽積極的な維持・保全の取り組みがなされ、今後も継続される見込みであること▽勾配が20分の1以上で1㌶以上ある▽棚田を含む地域の振興にかかる取り組みに多様な主体・世代が参加していること▽自然環境の保全▽伝統文化の継承ーなどがある。
別府市の棚田は▽内成棚田(内成棚田の会)=棚田が一望できるポイントに展望所、駐車場、ベンチや案内板などを設置。パンフレットなども作り観光施設に配布している他、農業体験などを実施▽東山の棚田群(東山地区集落協定)=地元の幼稚園や小中学校の農業体験や市民農園、東山ハイキングコースへの参加者との交流など。5つの支部で構成されている▽大所棚田(大所活動組織)=年間を通じて共同取組として、水路の清掃や補修、農道等の草刈り、野焼きを行うなど、保全活動を行っている
▽堂面棚田(堂面棚田を守る会)=子どもたちに田植えや稲刈り体験を行っている他、アフリカンサファリと連携してサトウキビの試験栽培などにも取り組んでいる▽天間棚田(天間地区集落協定)=地元の活動組織が草刈りや農業用水路の清掃などを定期的に行い保全活動を行うことで、棚田の持つ洪水防止機能や土砂流出防止機能の維持につながっている。
これまで、地域住民らによって守られてきた棚田の風景が、「貴重な国民的財産」として認定されたことで、保全活動や地域振興へつながることが期待されている。
認定証書授与式は3月にオンラインで行われる予定。