明豊高校「勝つのは簡単ではない」

7回1死1、2塁、3塁打を放ち
ガッツポーズする石田智能選手
試合を終え、グラウンドを引き揚げる明豊の選手たち。
スタンドから熱戦をたたえる大きな拍手が送られた

 大分代表の明豊高校は10日、第2試合に登場し激戦を繰り広げたものの、北海高校に延長10回に逆転され、8―9で敗れた。
 北海が見せた執念の逆転劇は、途中から出場した背番号17、小保内(おぼない)のバットが引き寄せた。
 タイブレイクに入り、1点勝ち越された直後の十回無死一、二塁、先頭の関が送りバントに失敗した。続く小保内へのサインは強攻。「内野の間を抜けばいい。絶対に打つ」。直球に押し負けないよう、ポイントを投手寄りに近づけた。3球目。鋭いスイングで右前に運んで同点に。「土壇場に強い。打ってくれると思っていた」と奮起した大石が安打で続き、試合は決した。
 小保内は1年秋から守ったレギュラーの座を、夏前に失った。「打てば使ってもらえるはず」。控えならば、より勝負強くなければと考え、誰よりも練習した。打撃練習で打つ球数を減らし、少ない機会で安打する意識づけもした。七回途中の守備から出場したこの日、直後の打席で初球を左翼ポール際に運ぶ2ラン。4点差を半分に縮め、チームは勢いづいた。「競った展開になるだろうから、キーマンは小保内だと思っていた」。平川監督の読み通りだった。
 今夏はスタメンの過半数が2年生。これが公式戦初の本塁打という小保内は「背番号なんて関係ない。どんな形でも3年生として意地を見せたい」。頼もしい控え選手を擁する北海が、2016年以来の決勝を目指す旅路をスタートさせた。
 明豊は追いすがる相手から、4度もリードを奪う地力を発揮した。逆転された直後の五回には一死一、二塁の好機で、主将で4番の西村が「逆風に負けない低い打球を」と速球をセンター方向へはじき返すと、中堅手の頭を越えて逆転の2点三塁打となった。チームは延長の末にサヨナラ負けを喫したが、西村は「相手が上だった。自分たちはやりきった」と、顔を上げた。
 明豊の川崎監督は「(延長十回は)気持ちと気持ちのぶつかり合いで、相手の方が上回った。最後はうちもよく粘った。甲子園で勝つのは簡単ではない」 と話した。  (写真・文章は読売新聞提供)