昨年11月7日に60歳で亡くなった別府市在住の男性の遺志により12日、1300万円が「あしなが育英会」(本部・東京)に遺贈された。母親は「困っている人にいいことをした。えらいと思う」と話している。
この男性は三好幸正さん。市内の公立高校から東京の私立大学を卒業して関東で働いていた。父親が脳梗塞で倒れたため帰省し、杵築市の郵便局で配達職員として働きながら父親の介護を日課としていた。しかし、介護の甲斐なく父親は令和2年4月に亡くなり、そのころ幸正さんに胸腺がんが見つかった。余命1カ月となった昨年9月15日、残される母親明美さん(91)を託すため、幸正さんは行政書士の宮園哲郎さんに相談。宮園さんは遺言執行者となり遺言公正証書を作成。幸正さんの葬儀の手配や友人に知らせるなど手を尽した。葬儀では明美さんが入所する南荘園町の住宅型有料老人ホーム「福笑居」統括マネージャーの野中真奈美さんが弔辞を読んだ。
幸正さんは質素倹約を旨とし、所得を積み上げて預貯金や金融資産があり、そのうち7割に当たる1300万円を同育英会に。同育英会を選んだのは、大学進学のころ父親が交通事故に遭い、一時は進学を断念せざるを得ない状況になったことから、同じ境遇の学生の一助になればと遺贈を決意した。
あしなが育英会は「この度、三好幸正さんの遺志による寄付に心から感謝申し上げます。育英会は病気や災害、自死(自殺)などで親を亡くした子ども、親が障がい者のため働くことができず、経済的に困難な状況にある子どもたちの高校、大学、専門学校への進学を支援しています。現在、7千人もの遺児たちが育英会の奨学金を受けて学校に通っています。しかし資金が十分でないため、すべての希望者を採用することができていません。今回、三好さんからの遺贈寄付は一人でも多くの遺児たちの進学の夢をかなえるため大変大きな力となります。三好さんの遺志にお応えできるよう大切に使わせていただきます」とコメントした。
同育英会は15日、三好幸正さんの遺贈に対し感謝状を送付した。