介護施設経営する日田出身社長が来社

「将来はふるさとで事業を」と
臼井社長

 日田市出身で現在は札幌市でデイサービス(通所介護施設)など10カ所を展開するHTC株式会社の臼井宏太郎社長(51)がこのほど来社した。創業以来15年間、全店舗で黒字経営しているという。
 臼井さんは日田の高校を卒業後、福岡の大学に進学した。しかし、日田で呉服店を経営していた両親が事業に失敗。大学を中退し、アルバイトを続ける中でホテル・グランドハイアット福岡のレストラン部門に就職できた。
 27歳のとき、東京の通信会社代表からヘッドハンティングされた。4千万円が入った通帳を渡され、ITの会社を立ち上げるよう命じられたが、経営のことが分からず結局、立ち上げられなかった。
 そのため経営を勉強しようと平成14年に東京の上場コンサルティング会社に転じ、飲食業のフランチャイズチェーンのコンサルティング業務に携わる。多店舗展開の組織づくりと人材育成を支援した。
 平成19年に経営コンサルタントとして独立。最初の顧客が北海道の介護事業者だったことから、介護業界に関わるようになった。
 平成21年、36歳で「HTC」を創業した。Hはヒューマン(人間)、Tはトラスト(信頼)、Cはケア(介護)を意味する。
 事業の立ち上げ前に複数の介護事業所を視察した。「どこも職員は疲弊して上司や同僚、会社の不満ばかり。事業所の多くは赤字経営に苦しんでいた。利用者も明るい気分になれず暗い雰囲気が漂っていました」と臼井社長。
 介護の仕事は精神的にも肉体的にも負担が大きいが、職員の処遇はそれに見合うものになっておらず、モチベーションを高めにくい状況だった。「他のどの業界にも負けない、大きなやり甲斐がある仕事」ととらえていた臼井社長は「HTCに関わるすべての人を幸せにする」という会社の理念を浸透させた。
 理念を浸透させるため臼井社長は研修や会議、個別面談など機会があるたび理念について説くようにしている。10カ所の全店舗で創業以来、右肩上がりの経営を続け現在は110人のスタッフを擁し年商5億円に達する。全国から注目されている。
 この15年を振り返って臼井社長は「長いようで、あっという間でした。北海道は身寄りもなく、ゼロからのスタートでしたが、ありがたいことに多くの人に支えられてきました。多くの法人が弊社を視察し、今では年間20社が訪れます。その半数が九州の法人で、いずれは九州、大分で事業を展開して地元に恩返ししたい」と意気込んでいる。