別府市野口原にある、京都大学地球熱学研究施設が100周年を迎え、6日、ビーコンプラザで午後2時からシンポジウム、午後3時50分から記念式典を開催した。
施設は、1923(大正12)年に竣工し、翌年から研究及び業務を開始した。1927(昭和2)年には、国費及び熊本県の援助で阿蘇郡南阿蘇村に「火山研究施設本館(阿蘇)」を設立。1937(昭和12)年に別府と阿蘇を統合し「火山温泉研究所」と改称した。その後、両研究所は分離。別府に熱水環境部門と地熱形態研究部門(外国人客員研究部門)を10年時限で増設。1997年(平成9)年には、再び両研究所が統合され、別府を本部に、阿蘇は「地球熱学研究施設火山研究センター」となった。翌年には、「大学院理学研究科附属地球熱学研究施設および同施設火山研究センター」に改称した。
地球上で最大規模の火山・地熱温泉活動域の一つである中部九州地域を巨大な実験装置とみなして、野外観測・調査や物質科学的・理論的解析を行い、熱現象の総合解析を推進。これらの結果を全地球的規模で展開する同様の研究結果と合わせて、地殻表層からマントル・核にいたる熱構造と熱現象の解析を進め、総合科学としての「地球熱学」の構築を目指している。現在は、火山活動論、火山構造論、地球熱学情報、地熱流体論、地熱テクトニクスの5つの研究分野がおかれている。
式典では、大倉敬宏施設長が「本部施設は、大分県や別府町(現在の別府市)の協力で、ビーコンプラザ近くにできました。発足当時は、一般的な地球熱学や温泉など総合的な研究が目的とされました。継続して行われてきた温泉に関する研究成果は、別府温泉をはじめとるす大分県内の資源保護に活用されてきました。これからも、次世代の育成に加え、地域にも貢献する施設となっていきたい」と式辞。
来賓の湊長博京都大学総長は「全国有数の温泉地である別府市、大分県をフィールドに、国内外に誇る研究成果をあげてきました。理学研究科の教育機関としての側面もあり、野外観測などの場を提供し、実地教育にも大いに力を入れています。今後も、『京都大学の窓』として大きな役割を持っている重要な研究施設。地域に貢献するとともに、世界に通用する研究、教育を継続して行ってもらいたい」と祝辞。橋爪淳文部科学省研究開発局審議官もあいさつをした。
地元の佐藤樹一郎大分県知事は「大分県の観光になくてはならない大事な温泉は、有限な資源で、適切に管理していくことが大切。温泉審議会などにも協力してもらっており、全国で最もていねいな審議がされていると考えています。次世代の研究者の育成にも県として強く期待しています」。長野恭紘別府市長が「設立以来、別府市を主な研究対象地域として、温泉、地下水、地熱に関する調査に力を注がれ、その間に得られたデータを用いた研究により、別府市の発展に多大なる貢献をしてもらっています。鶴見岳、伽藍岳といった活火山の火山災害対策にも協力をしてもらっています。別府市も市制100周年を迎え、温泉マネジメント計画を策定しました。今後も温泉資源の保護、持続的活用、火山災害対策など、一層のご支援、ご協力をお願いします」とそれぞれあいさつした。