強権に慈愛を求める

 ドナルド・トランプ氏、米国大統領に返り咲いた。これほどドギツい大統領令は見た事、聞いた事が無い。▽不法入国者の徹底阻止▽性別は男と女のみ▽WHOから脱退▽前政権スタッフ千人を解雇▽パリ協定離脱▽行きすぎたDEIプログラムの廃止▽バイデン政権下、78大統領令の撤回▽国防長官主導のアメリカ第一主義――など数え上げればキリがない。一日で80に近い大統領令を出した。
 2度目の登板で支持者から試されている。トランプ氏の就任でアメリカが変ったという印象を作り出したい意図は確かにある。自らを「独裁者」と名乗り、就任1日目はこの独裁者スタイルを通すという。
 諸外国は固唾をのんで、この状況を静かに見守る。しかし確かに驚くのは「米国大統領令」の権威と強制力である。これほど強権な国権発動は世界中に瞬時に行き届き、言葉は悪いが影響力は想像を絶する。
 反面、本当の独裁者がこれを行えば大変な事になる。日本は只々固唾をのみつづけるか…。しかしよくよく考えてみれば、大統領令の多くは「有事」を想定したものとも感じる。不法入国者の徹底排除や、LGPDの不法権利要求、安全保障分野の「アメリカ一番!」――など変に納得も出来たりする。
 不法入国の権益確保はたとえば、ニューヨーク市が移民や難民を優先的に受け入れた事で、市内のホテルが満杯状態。街の清掃が間に合わず、旅行者はホテル予約が取れず、取れても高価な宿泊料になって「優良な」訪問者の来訪に障害となって市財政を圧迫。この例は我が国のある都市でも散見されているところ。入国者がコミューンを作り、治外法権化の傾向に襲われた。避難民と不法滞在の線引きが必要だ。異文化交流と言えば聞こえはいいが、速見郡日出町はイスラム教徒の墓地問題で町を2分した。
 どこの国でも、滞在を希望する者はその土地になじむ努力と定住ルールが必要だ。ヨーロッパでは不法滞在者がスラム街を築いて「原住民」に被害が続出しているという。
 この強権大統領、78歳4カ月の高齢者である。歴代最高齢の就任という。たとえば80歳近い日本のトップがこのくらいの迫力を持って事を進めきるか。その意味では高齢者に再起の「意欲」を提供できたのでは。人生百年を地で行った。オールドパワーはまさにストロングパワーだ!「弱さに寄り添えば、共倒れになる…」「強くなければ生きては行けない…」
 しかし「優しくなければ生きて行く資格はない」レイモンド・チャンドラー=という思いも付け加えてもらいたいものだ。  (陽)