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初めて岩尾秀樹画伯(元国画会会員、本名・三好秀樹)の自宅兼アトリエを訪れたのは、昨年の3月末でした。その家は亀川の造成された団地の一角、古い地名の内竈(うちかまど)釿(ちょ)ノ(ん)掛(がけ)という丘の最上部にあり、家を建てた時は一軒の農家だけとききました。別府湾を望み、広々と朝夕変化する天空と海景のただ中にあるのでした。
姫野淳子社会教育課長とともに訪問し、画伯の長男である三好民郎氏と次男の史郎氏に出迎えられ、二階のアトリエに案内されました。作品の搬出を想定し設計されたであろう幅広い階段を上った瞬間、その広さと天井の高さ、ぎっしりと隙間なく置かれた大きな作品の数に圧倒されました。なによりも長年に染み付いた油彩画のオイルの匂いが私たちを迎えてくれたのです。
「父の作品の散逸は避けたい」民郎氏の思いから、市への一括寄贈の話が進められていました。美術館としては大分県の洋画壇を牽引した郷土作家の作品を何としても所蔵したいと切望する一方で、収蔵庫の確保の問題を抱えていました。検討の末、ようやく解決の方向性が見えてきた中、特別展の開催を計画したのです。
画伯は1924年3月生まれ、奇しくも別府市は市制施行が同年の4月で、生誕100年と市制100周年が重なり、迷うことはありませんでした。市制100周年記念事業の一環として開催する「生誕100年記念岩尾秀樹展」の輪郭がはっきりと見えた瞬間です。
画伯が書き残した覚え書の中に見つけた言葉「いのちのカタチ」を副題に添えました。展示設計は、三好兄弟、画伯の愛弟子である画家の檜垣正喜氏と師事した和田清氏にお願いし、1月25日に関係者を迎え、多くの一般観覧者も交えて、華やかなオープニングセレモニーにより開幕することができました。 (つづく)
文・檜垣伸晶別府市美術館長