
油布昌孝氏(左)に感謝状を贈った

寄贈された「夫婦岩」
別府市は9日午後1時30分、去る2月に竹工芸品を寄付した伝統工芸士の油布昌孝(雅号、昌伯)氏に別府市美術館1階絵画・彫刻展示コーナーで感謝状を贈呈した。
出席者は、油布氏、妻の輝子さん、来賓の岩尾一郎別府市竹製品協同組合理事長、別府市から長野恭紘別府市長、寺岡悌二教育長、矢野義知教育部長、津川文隆社会教育課長、宮坂美穂別府市竹細工伝統産業会館長が出席した。
竹工芸品の名称は「夫婦岩」。令和2(2020)年に制作・完成。幅154・9㌢㍍、奥行149・8㌢㍍、高さ60・9㌢㍍。大分県産の真竹を使い、伝承の夜多羅(やたら)編みで制作。夜多羅編みは、長短や太さのさまざまな竹ひごを使い、各方面から不規則に編み込んでいく技法。自ら手作業で加工した竹ひごを使うことで作品に凹凸ができ、重厚な仕上がりとなる。独特の編み方から「みだれ編み」とも呼ばれている。
油布氏に感謝状を贈呈した長野市長は「壮大で素晴らしい作品を、別府市に寄贈していただき、改めて感謝申し上げます。長きにわたるご活躍、別府竹細工を守っていただき、そして発展させていただきました。一人でも多くの皆さまに先生の作品を見ていただきたい」とあいさつ。
来賓の岩尾理事長が「この作品は、夜多羅編みという独特の技法で、油布昌伯先生らしい作品となっています。日本竹工芸界の中でも夜多羅編みの造詣にかけては他の追随を許さない日本一の作家だと思っています」と祝辞を述べた。
続いて油布氏が「この作品が出来たとき、コロナが流行する前でした。米国ニューメキシコのサンタフェのギャラリーからの依頼で作ったもの。しかし依頼をした人がコロナで帰らぬ人になったので、これをどうするか悩んでいたところ、市美術館に落ち着いた」とあいさつし、最後に記念撮影をした。
贈呈式終了後、油布氏は報道陣の質問に対して「依頼者から『3㍍の円卓で向こうの人と話すのに、何かネタになるものを作ってほしい』という電話があった。正月の新聞に豊後二見ケ浦の夫婦岩が載っていて『これなら』と感じて作り始めた。作品の中に縄があるが、竹で作っている。これは若い人に伝承されていない。ところどころ竹を束ねて編んだ私が考案した『龍紋』がある。私ならではの籠になっている」
「一生懸命作ったが、ここに置かれて技術よりも『なぜこれが出来たのか』という出来方を、今からの人が見て何か感じてもらえればありがたい。美術館に置かれただけでもありがたい」と答えた。
また同コーナーには、油布氏の父・竹龍(ちくりゅう)氏の「つぶし花籠」も展示している。