
湯布院観光の街づくりに励んだ3人の青年を中心とした小説「由布山」(青磁社、A5版、183ページ)を別府市秋葉町の歯科医師、山本信(本名・恒雄)さん(81)が刊行した。
山本さんは北九州市門司の出身。昭和48年に別府に移り、休日は湯布院で過ごすようになる。そのころ、独バーデンバーデンに観光の勉強に行った中谷健太郎、溝口薫平、志手康二の3氏と出会い、この街に興味を持ったことが今回の小説につながった。
当時の湯布院は「緑、静か、いなか」をコンセプトにした家族で過ごす街だった。建物に高さ制限を設け、派手な看板を禁止し、温泉に50円で入湯できていた。外国からのインバウンド客が増えた今とは隔世の感がある。
資料集めは新聞を切り抜き、インターネットも読み漁った。夏目漱石ら文豪の作品を愛し、俳句を詠む山本さん。ストーリーは自然と天から降ってきたという。40年にわたり別府北ロータリークラブで奉仕活動を続け、理想の追求について考えてきたことが、湯布院の街づくりと通底した。
「80歳になった記念に1年かけて仕上げた。書きたいことは、すべて書けたと思う。金もうけじゃない観光の街づくりに取り組んだ物語で、読んでほしいと言えばおこがましい気がします。本を書くのは時間と労力がいります。2冊目は考えていません」と山本さんは話すが、観光関係者は一読することを薦めたい。