
鉄輪温泉みらい会議(安波照夫委員長、26人)はこのほど、50年後の鉄輪温泉の未来をつくる「鉄輪温泉みらい基本計画」を策定した。地元住民や事業者が自らのまちの未来を考え、持続可能な鉄輪温泉づくりをスタートさせた。
鉄輪温泉は、鎌倉時代の建治2(1276)年に一遍上人が開いた湯治場と伝えられ、多くの湯治宿が並ぶなど栄えてきた。道路の側溝に温泉が流れ、道のあちこちから立ち上る湯けむりは、湯治場の情緒を感じさせ、噴気を使ったヘルシーで素材そのものの味を楽しめる「地獄蒸し」も人気。平成24年には「湯けむり・温泉地景観」が国の重要文化的景観にもなっている。
鉄輪むし湯の2階にある鉄輪交流センターの書籍を整理していたところ、昭和29年の手書きのゼンリン住宅地図を発見。今も営業しているところを調べてみると、当時は旅館66軒、商店78軒あったが、現在は旅館33軒、商店は26件と大幅に減少していることが分かった。また、建物の老朽化や後継者不足の問題などで、近い将来廃業せざるをえない所もあることが分かり、「このままでは鉄輪が衰退する」と危機感を持った地元の自治会、旅館組合、商工連合会、若手経営者、移住者などで昨年12月、「鉄輪温泉みらい会議」を立ち上げた。5回の会議を重ね、5カ年計画を策定した。
計画では、鉄輪温泉の未来に向けた「まちづくり」の方向性を明確にするため、コンセプトを「温泉と湯けむりの風景を大切に守り心とからだを元気にするまち」とした。①エネルギーあふれる地獄地帯と湯けむりたち昇る湯治場景観を大切に守り育てるまち②温泉の恵を享受する住民の健康と豊かな暮らしがあって成り立つまち③人々の交流によって新たな価値を醸成し生活を豊かにする産業を育てるまち、とした理念を掲げた。
基本理念に沿って▽長期滞在型の推進計画=長期滞在プログラム開発、商店街の魅力づくり▽湯治場の基盤整備計画=ビジターセンターの新設、観光推進体制の整備、地域観光統計▽まちづくりの推進計画=住民意識の啓発、イベント協力・支援、事業継承対策、空き地・空き家対策、投資人材の確保▽滞在環境の整備計画=温泉資源の保全・活用、交通体系の整備、行政との連携促進、の13のプロジェクトをおこなう。すでに動き出しているプロジェクトもあり、NPO法人鉄輪湯けむり倶楽部が主体となって、各プロジェクトの活動を支援するための助成金を支給するという。
安波委員長は「一長一短で出来るものではないが、少しずつでもプロジェクトを進め、鉄輪温泉が良くなればと思う。5年間、一生懸命取り組んでいく」と話した。