ラグビーW杯で外国人案内所奮闘

朝から多くの観戦客が訪れてシャトルバス発車までの
時間を有効に使おうと相談をする姿が見られた

 9月20日から11月2日まで開催されたラグビーワールドカップ2019日本大会は、大きな盛り上がりをみせた。世界中のラグビーファンが日本を訪れ、試合だけではなく、会場周辺の観光を行うなど、楽しんだ様子を多くのSNSにアップしている。
 大分会場では、予選プールでニュージーランド対カナダ、オーストラリア対ウルグアイ、ウェールズ対フィジー。決勝トーナメントでは、準々決勝でイングランド対オーストラリア、ウェールズ対フランスの試合が行われ、いずれも強豪チーム揃いの熱戦が繰り広げられ、試合後の街中も熱狂の渦に巻き込まれた。
 別府市では、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、ウェールズ、イングランドの延べ6カ国(ウェールズが2回)の代表チームが公認チームキャンプ地として練習を行い、高評価を得ている。強豪チームがキャンプを行ったことで、多くのファンも別府に宿泊をして、試合のあった日は夜遅くまで盛り上がり、北浜公園のおもてなしゾーンには入りきれないほどの人が集まり、北浜界隈の飲食店も多くの外国人客で賑わった。
 そんな中、大会を陰で支えていたのが、案内所の存在。一般社団法人別府市産業連携・協働プラットフォームBーbizLINのBIP(別府インターナショナルプラザ)事業部が、JR別府駅のえきマチ1丁目別府(ビーパッサージュ)と鉄輪バス乗り場の2カ所、別府駅構内に今年4月にオープンした外国人向け交流型観光案内所「ワンダーコンパスベップ」、大分県もワンダーコンパス内に案内ブースを設けるなど、対応に当たった。試合のある日は時間を延長し、街中にスタッフが出ていって困っている外国人客に声をかけて問題解決のお手伝いをするなど、「旅人をねんごろにせよ」のおもてなし精神で大活躍した。

サッカーW杯の経験が生きた

 BIPの稲積京子マネージャーは、普段はアジア系の利用者が多い中で「欧米人の数は、普段の10~20倍あった」と振り返る。旅の熟練度や滞在期間によってニーズは様々だったという。「あくまでも、ラグビーの試合を観に来ている人が中心なので、まず聞かれるのは、試合会場までのアクセスや次の日の移動手段、時間。余裕のある人は観光についても聞くが、多くは口コミなどで行きたい場所を決めているので、窓口でもう1度どこに行くのがオススメかを確認して、行くという人も多くいた。試合前の2時間だけ観光したいので、1カ所だけ教えてほしいとかいう人もいた。また、温泉でタトゥーがあっても入れる所などの問い合わせもあった」と話す。
 「みんなが行かないような場所に行きたい」とよりコアな場所を求める人や「毎日ランニングしたいので、一定の距離走れる場所を教えてほしい」という人など、ニーズは様々。自然体験への希望も多く、別府ロープウェイは人気スポットだったようだ。また、民泊する人の中には、初めての場所で距離感があまりつかめなかったのか、夜中に国東の山奥の宿泊施設への道を聞かれてみんなで四苦八苦したケースも。
 2002年の日韓共催サッカーワールドカップの経験もある稲積さんだが「サッカーの時とは何かが違う感じだった。これほど多くの外国人客はいなかったし、試合時間もサッカーは早かったせいか、電車などで移動していく人が多かった印象。シャトルバスの影響もあったのかも」と話す。同じ英語圏でもクセが違い、聞き取りにくいこともあったが、次第に慣れて対応できるようになったとか。
 今回の対応を通じて、稲積さんは「スタッフの経験値が上がったと思う。色んな二ーズがあって、相手と話をする中で、この人にはどういう所が良いかを考えて対応することで経験が積み重なったし、自分がバスに乗っている時でも、良い場所があればアクセスはどうだろうとか当事者の気持ちで見ることが出来るようになって、視野が広がった。スタッフも通常よりも多く勤務して協力してくれて、全力でおもてなしを頑張った。それが次につながると思うし、全てが良い経験だった」と話した。

各案内所がワンチームに

 一方で、ワンダーコンパスは、BIPと外国人観光客向けのガイドマッチングサービスを提供する株式会社ハバーが運営している。通常午後6時までの営業を午後9時まで拡大し、試合があった日は午前1時まで対応した。試合の前後や当日は1日300~400人が訪れた。2、3時間の間の観光を希望していたり、温泉に入りたいなどの要望が多かったという。また、長期滞在する人は、国東や宇佐など広域観光を楽しむ傾向が強く、交通アクセスの問い合わせ、手荷物預かり、チケットの販売も。さらに、レンタサイクルの需要も高く、並べていてもすぐに貸し出されていったとか。
 別府だけではなく、県下の観光コンテンツも案内しながら、施設内に留まらず“遊軍”を出して、困っている人を見かければ積極的に声かけをして、タクシーとの間で通訳をしたりと奮闘。各案内所のスタッフが「ワンチーム」になって最高のおもてなしをしようと頑張ったことで、訪れた観戦客にも楽しい思い出が残ったようだ。

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