5期20年にわたり大分県政を牽引した広瀬勝貞知事(80)の退任式が27日午後2時半から行われ、終了後、県庁を後にする広瀬知事を見送ろうと職員や一般の人など大勢がつめかけ、労いと感謝の気持ちを込めて、大きな拍手で見送られた。
広瀬氏は、経済産業省出身で、2003年4月に知事に就任以降、「聖域なき行財政改革」で県財政の建て直しに尽力。2期目には、県立高校の再編、大分国体・全国障害者スポーツ大会大分大会の開催など。3期目は大分県豪雨で日田市や中津市、竹田市などで甚大な被害が出て、復興に力を入れた。「おんせん県おおいた」を商標登録や東九州自動車道の県内区間が全線開通するなど、観光振興を図った。
4期目では、熊本・大分地震や福岡・大分豪雨など自然災害に見舞われる中、県民に寄り添った県政を推進。国民文化祭と全国障害者芸術・文化祭が行われるなど明るいニュースも。5期目には、ラグビーワールドカップ日本大会が開催され、大分では予選や準々決勝5試合が行われ、外国からも多くの人が訪れ賑わった。大分空港が「宇宙港」に選定され、期待が高まっている。一方で、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、県内経済の建て直しはこれから。この間、企業誘致も積極的に進めてきた。
退任式を前に、新知事の佐藤樹一郎氏(65)と引き継ぎを行った。引き継ぎ文章はデジタル化してタブレットの中に収められ、両氏ともタブレットに署名をして握手を交わした。広瀬知事は「信頼できる人に引き継ぐことができて、ホッと安堵している」と話し、託された佐藤氏は「責任の重大さを感じています。広瀬知事がすすめた県政を継続・継承しさらに大きく発展させるようにしていきたい」と意気込みを語った。
退任式では、職員を前に「聖域なき行財政改革からのスタートで、人件費削減、経営効率化など必要なことは例外なく断行し、職員にとっては厳しい話もあったと思いますが、県民のためならと理解、協力していただきました。時には生産者、時には事業者の気持ちになって事業を実行し、実を結んだと思う」とし、安全・活力・発展の取組やこれまでの県政を振り返った。
「これからもアンテナを高く張り、広い視野でていねいな現場主義で仕事をしてもらいたい。行政のプロとしての腕を磨いてほしい。明るく、夢多い大分県づくりのため、力を尽くしてもらいたい。心から応援しています。これまで、本当にありがとう」と思いを述べた。
職員を代表して、尾野賢治副知事が「県民は何を、時代は何を求めているのかを考え、決断して実行し、情熱を持って努力することを学びました。これからも、厳しく温かく見守ってもらいたい」とお礼を述べた。
その後、妻の尭子さんと一緒に県庁の正面玄関に姿を見せると、職員から花束が渡された。玄関の内側、外側ともに過去に例を見ない約千人の職員が並び、庁舎の窓からも広瀬知事を見送ろうと職員が顔を出していた。広瀬知事は、見送りに来てくれた多くの県民にも感謝の気持ちを述べて車に乗り込み、すっきりとした笑顔で県庁を後にした。