同根異種

 「凶状」持ちの渡世人が、身を隠すため旅へ。行き着いた町はバクチと高金利を生業とする親分のお膝元。仁義を切って部屋に通され、円満な話しが続いたと思ったら「凶状」について認識に違いがあったか、一家ナンバー2の代貸しが割って入り「親分に対して失礼じゃねぇか!」「テメエこのままじゃ済まねえぞ!」と凄いケンマク。仕方なくワラジを履き直して、この町を後にした。――東映の任侠シリーズのようなこの光景はホワイトハウスで見られた。トランプ大統領、ゼレンスキー・ウクライナ大統領、割って入って喧嘩に仕立てたバンス副大統領との会談がこの状態。
 米大統領のユニークすぎる言動や行為は今さら口にすべきものではないが、とくに気に残った点、ウクライナ侵攻終結前に、国有の貴重資源「レアアース」の採掘事業をロシアのプーチン氏と共同で行うという支援の見返りを求める姿が、和平への道のりをさまたげた。また富貴にして貴き大国アメリカを、はるか下位のレベルに下げた彼の拝金主義には、落胆と脅威さえも感じる。
 ゼレンスキーは自分が職を退く事で停戦がかなうのであれば、快く身を引く覚悟を公表した直後。身も心も打ちひしがれた心境を思う。言葉の言い違いを指摘して「感謝がたりない!」――首脳会談では使わない言葉だ。
 ゼレンスキーは「感謝」があるからこそ、母国を離れ、ホワイトハウスを訪問した。その訪問の覚悟をくみ取らずして、直情径行型で品位が備わらない。旅人への対応は敬けんなキリスト教者を自認する自己矛盾をどう払拭すべきか。
 離米後訪れたイギリスはじめ16カ国の首脳は共同でウクライナ支援。さらに当座の支援額と停戦後の英国軍派遣まで申し出た。この欧米の違いはどう表現すべきか。
 国家の財政再建をめざす政権というイメージを強調するが、国民や地球上の人々から嫌悪感を抱かれては前途多難。世界を旅する米国人が狙われる事態に発展する可能性を大統領自らが構築した事になる。
 戦後復興で得た「利益」を取り戻す力はアメリカの「お家芸」。第二次世界大戦後、米国の巨大企業は欧州派遣の復員兵を大々的に雇用した。軍人の福利とあわせ、欧州派遣経験者を、進駐した地域に今度は企業戦士として再度派遣して欧州各地の復興事業に参入させた。フォード、GM、USスティールと、あらゆる企業が参加して事業展開、欧州も米と協力体制を構築して産業界の復活に拍車がかかった。第二次世界大戦後の復興ビジネスで米国も損失を上回る企業利益を得る事となった。終戦復興と欧州はじめアジアの和平は、人々の福利的な社会生活へと生かされる事となり、アメリカへのイメージが戦前よりすっかり変わる事となった。アイゼンハワー、ルーズベルト、ジョン・F・ケネディとドナルド・トランプ――同じアメリカ大統領なのになぁ~。  (陽)