通信事業の全国大手「時事通信社」=本社東京都中央区銀座5丁目・境克彦社長(大分県出身)=が主催する内外情勢調査会大分支部は、4月懇談会を開き、支部長を務める佐藤樹一郎大分県知事が講師をつとめた。知事就任から県下全市町村を回って県民の思いを込めた提言や要望をもとに、ふるさと創生にかける新基軸としてまとめ、微細にわたる佐藤県政の基本方針を一気に語った。以下はその要旨。5回の連載とする。
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佐藤樹一郎大分県知事
大分県知事就任後、まもなく2年が経過。広瀬県政の継承と発展、大分市長職が貴重な経験となった。昨年度も、県民と積極的に対話と連携を重ねてきた。
「県政ふれあい対話」は18市町村、46団体、357名を対象に行った。
市町村との連携1・新しいおおいた共創会議
県と市町村が緊密に連携し、「安心」「元気」「未来創造」の大分県づくりをともに推進することを目的として「新しいおおいた共創会議」を設置した。
大分県まち・ひと・しごと創生本部会議をR5にリニューアルした。7月の会議では、人口減少社会を研究されている京都大学の諸富教授にも参加(オンライン)していただき、ご講演の後、人口減少に対応した持続可能なまちづくりについて、諸富教授と市町村長、私で意見を交わした。
・第3回 R6/7/19
(1)新たな大分県長期総合計画について
(2)人口減少に適応した持続可能なまちづくり
・第4回 R7/2/14
(1)地方創生の取り組みについて
①県第3期まち・ひと・しごと創生県総合戦略案について②各市町村の総合戦略案について
(2)脱炭素社会実現に向けた取り組みについて
市町村との連携2・市町村長との意見交換会 年1回実施
市町村から提案があった議題について、市町村長と意見交換を実施した。
・R6/10/24 協議テーマ
(1)南海トラフ巨大地震等に備えた防災対策について
(2)消防力の維持・強化について――とした。
▽新たな長期総合計画の策定
こうした県政ふれあい対話を通じて県内地域・各種団体の皆さんから直接伺ったお話や、市町村をはじめ計画策定県民会議など多様な声を伺いながら、新たな長期総合計画「安心・元気・未来創造ビジョン2024~新しいおおいたの共創~」を、R6年9月に策定。
基本的な考え方として、これまでの成果の「継承」と新たなステージへの「発展」、県民の声、思いをカタチに「10年後のさらにその先」も見据えて策定した。基本目標は、「誰もが安心して元気に活躍できる大分県」「知恵と努力が報われ未来を創造できる大分県」私たちのふるさと大分県を夢と希望あふれる新たなステージへと発展させていきたい。
▽R7年度当初予算
今年度は、この新たな長期総合計画「安心・元気・未来創造ビジョン2024」の実行元年と位置付け、防災対策の強化や人材の確保・育成、広域交通ネットワークの充実、質の高い教育環境の確保などの施策を盛り込んだ予算を編成し、予算案を県議会に提出、3月27日にご承認いただいた。当初予算の総額は、7026億7700万円で、前年度と比較すると128億6900万円、率にして1・9%のプラス。
▽主な予算の内訳
新たな長期総合計画に掲げた目指す姿の実現に向けて用意した25億円の予算特別枠「新しいおおいた共創枠」には115事業、34億6800万円を計上。こども・子育て支援の充実なども含む「社会保障関係費」は、後期高齢者の医療費の増加などに伴い前年度比30億9300万円、率にして3・4%プラスの940億4800万円。「投資的経費」では、防災ヘリコプターや防災情報通信システムの更新などにより、総額は前年度比67億1800万円、率にして4・7%プラスの1491億円。公共事業は、台風第10号からの復旧、県土の強靭化の推進、広域交通ネットワークの充実などで前年度を上回る額を確保。
▽財政の健全性
右下の「財政の健全性」について、財政調整用基金残高は、現時点ではR7年度末で約245億円となるものの、R6年度決算剰余金の積立てや、R7年度中の執行段階での工夫・節約などにより、行財政改革推進計画2024の目標であるR10年度末330億円の残高確保を目指す。県債残高については、R7年度末に総額ベースで約1兆523億円、臨時財政対策債等を除く実質的な残高では約6237億円となる見込み。目標である6500億円は下回る。未来の世代に向け、災害に負けない力強い大分県を築いて行くために必要な事業は積極的に実施していくとともに、財政運営の健全性を維持していくため、今後も適正に県債残高を管理していく。
【安心①】災害に強い県土づくりと危機管理の強化
①災害の頻発・激甚化
風水害R6は幸いにも人的被害はゼロ。R5は4名の方が犠牲となった。
地震また、比較的大きな地震もおき、特に昨年8月には、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて気象庁から発表された。
②耐震化率
本県の耐震化率は、全国平均を下回っており、木造住宅の耐震化の加速させることが重要。H30全国平均約87%、大分県約84%(九州・沖縄5位)、目標95%(R15年度)
③治水ダム
近年、局地的な豪雨により、水位予測の難易度が増している。県管理10か所
県土の強靱化に取り組むとともに、防災・減災対策を強化し、頻発・激甚化する自然災害へ対応
住宅耐震化総合支援事業(1億4108万円)既存木造住宅の耐震化を加速するため、改修等に要する経費に対し助成する。耐震改修補助の拡充。補助率2/3 上限120万円から定額150万円に見直し。
治水ダム管理高度化事業(822万円)緊急放流時のダム周辺住民の早期避難を図るため、水位自動予測システム導入に向けたダム管理所の通信環境を整備するとともに、情報伝達手段の強化や危機管理意識の醸成を行う。
公共予算で実施
AIによりダムの水位を予想するシステムを導入(330万円)、河川監視カメラや放送機器を増設24か所(4800万円)。
県土強靱化関連公共事業(282億7952万円)※対象の公共36事業の合算。
災害からの復旧・復興や激甚化する自然災害に対応するため、災害時の集落孤立防止等に向けた優先啓開ルートの対策、治水・土砂災害対策、ため池の防災対策を実施する。
高機能消防指令センター共同整備支援事業(3979万円)
災害情報・活動情報の一元化、相互支援の迅速化による消防力の維持・強化を図るため、県全域の119番通報を一元的に処理する高機能消防指令センターの共同整備及び円滑な立ち上げを支援する。「おおいた消防指令センター」の共通維持管理費への助成。共同運用のためのシステム整備費等への助成。
避難所の環境整備や災害時の専門ボランティアとの連携強化等の取組を加速させるため、「協働・共助推進室」を新設。
災害に強い人づくり・地域づくりを推進するため、市町村などが行う孤立可能性集落における防災対策への助成のほか、避難所運営を支援するコーディネーターを養成
防災・減災対策加速化支援事業(1億5000万円)
市町村などが行う孤立可能性集落における防災対策や地域の防災活動、避難所等の環境改善に対し助成する。孤立可能性集落の備品等の整備補助率2/3。食料・飲料水の確保、ヘリポート等の舗装・整地など。避難所の環境改善補助率1/3(福祉避難所1/2)。冷暖房の整備、トイレ増改築、非常用電源・通信手段確保など。
避難所運営体制強化事業(343万円)
避難所運営を支援する「避難所運営コーディネーター」を養成するとともに、市町村との連携強化に向けた検討会を開催する。避難所運営コーディネーターの養成。対象は防災士等(3年間で100人養成)、内容は災害時の避難所運営訓練。※避難所運営コーディネーターとは、地域住民が自ら避難所を運営できるよう、開設や運営の助言ができる人材。
ふるさと創生NPO活動応援事業(3128万円)
他のモデルとなるNPOの育成に取り組むとともに、災害時の専門ボランティア受入体制を強化する。災害時に専門ボランティアの受入れ調整を行う中間支援組織の育成など。
県庁防災体制強化事業(1億8422万円)
関係機関と連携した防災訓練・研修の実施や、防災体制の充実等に取り組む。発災時に活用可能なトイレカーの導入(6台)。孤立支援・救助活動訓練や広域防災拠点物資輸送訓練の実施など。
【安心②】持続可能な環境づくりの推進
第4次大分県環境基本計画策定(R6/10月)
自然環境を「守る」のみならず「活かして選ばれる」視点を加え、経済の発展も促す新たな県民運動「グリーンアップおおいた」を展開。
計画における各主体の役割
県民は自らの生活・行動が環境へ及ぼす負荷への理解。環境保全活動などに参加。環境負荷の低減に取り組む。様々な課題をリスクではなく機会として捉え、新たなビジネスチャンスを創出。県民・環境保全団体・事業者がそれぞれの役割を果たせるよう、環境を軸とした各取組を後押し。
「グリーンアップおおいた」運動の展開により、守り、活かして、選ばれる「環境先進県おおいた」を実現
グリーンアップおおいた推進事業(2468万円)
「環境先進県おおいた」の実現を目指すため、本県の恵み豊かで美しく快適な環境を守るとともに経済の発展も促す「グリーンアップおおいた」運動を県民総参加で展開する。
おおいたグリーン事業者認証推進事業まる(3852万円)
県内事業者の事業活動における環境負荷を低減するため、脱炭素・脱プラスチックを目指す事業者を認証し、効果的な取組を支援する。金融機関と連携し、事業者のCO2削減量などと金利が連動する融資の枠組みを創設(大分県版サスティナビリティ・リンク・ローン)。事業者向け商用軽EV車両の導入等に要する経費への助成。商用軽EV車両、限度額30万円/台(20台)。EV充電設備の補助率、国庫補助額の1/2以内など。