国破れて山河在り、城春にして草木深し――唐詩珠玉の名作「春望」は、盛唐の「詩聖」と称された杜甫によって詠まれた。同姓である高名な学者に「杜祖健」さんという人がいる。90歳になる。台湾の出身で日本占領時代、台北大を経て、米のスタンウォード、エール大で、生物学を修めた。このあと永住を許され、現在コロラド州立大学の名誉教授。日本では千葉科学大、順天堂大でそれぞれ教べんをとった。専攻は薬学で、専ら「毒」を研究する世界の第1人者。
日本では、オウム真理教の地下鉄サリン事件当時、サリンの分析方法を警察当局に指導するなどの功績により、2009年旭日中綬章受章の栄に浴した。
このほど来日して、日本の危機管理に警鐘を打ち鳴らした。日本の著名なジャーナリストと対談している。
新型コロナウイルスは生物兵器という。状況証拠と前置きしながら、次の4点を指摘している。▽中国武漢市郊外に「P4研究所」というものがあり、人民解放軍と連携して生物兵器の研究を行っている。▽新型コロナウイルスには人工的に加えられた分子が存在する。自然発生したウイルスとは考えられない。▽ウイルスは動物実験で使用された動物を媒介して、市中の食物市場に流出したものと推測される▽ウイルス発生時、中国政府の指示で武漢の現地視察をしたのが、人民解放軍の生物兵器最高指揮官。本来なら医療従事者が派遣されるべきなのでは。――また研究所などでウイルスの製造と同時にその抗体やワクチンも同時進行して作り出すのが常道ながら、武漢には見当たらない。ここが感染を拡大させた大きな原因の1つという。
米軍のポンペオ国務長官は、中国に対し武漢の研究施設で得られた新型コロナウイルスの情報を世界に公表せよと、マスコミを通じて発進した。生物兵器の研究開発施設の存在を暗に認め、その対策ノウハウを国際社会に公表する事で、世界貢献の道を選択する最後の「良心」を訴えかけた。実に興味深い話だが、我が国のマスコミはあまり取り上げない。「緊急事態宣言の効果は。」「一世帯30万円はいつか。」「損失補償はやるのか。」「学校休みで育児に疲れた」――などともすれば被害者意識丸出しに走る。
要は日本という恵まれた自然大国の権益を侵略、奪取、占有する意欲の著しい国、その国がどのような兵器を開発して政治の表裏、国際舞台でどのような作戦を展開するか、その防卸策は――という、いわゆる国防のための作戦を作り上げるため情報収集態勢を構築すべき――と説く。
国が破れれば、明媚な山河だけが残る。城域内は草木が生い茂る――「春望」のロマンティックな情景など残るハズはない。国が破れれば全てが「消滅」する。そこには空虚の本質「無」のみが存在する事を、人は初めて知る事となる。 (陽)