湯舟から引き上げ救命処置

浜脇温泉で倒れた高齢男性を救助した阿部さん(左から2人目)に感謝状が贈られた

 別府市消防本部は9日午前10時、温泉入浴中の別府市民を助けた大分市生石(いくし)の阿部隆衞さん(70)に市消防本部で感謝状を贈呈した。
 2月9日午後3時頃、市営浜脇温泉を利用した阿部さんは、お風呂からあがり、脱衣所で服を着替えている時、浴室の異変を感じて中をのぞくと、高齢の男性が顔をお湯につけている状態で倒れているのを発見。靴下などを履いたまま湯舟に入り、男性を上向きにするとともに、浴槽から引っ張り上げた。その間に、駆け付けた番台係員に119番通報を頼み、以前習った救命講習を思い出しながら、胸部圧迫をしたという。男性は水を吐き、真っ青だった顔も救急隊が来る頃には赤みがかり、隊員の声かけにまばたきで答えられるようになった。現在、男性は回復して日常生活をおくれるようになっているという。
 阿部さんは大分市出身で、仕事で大阪に住んでいたが60歳で帰郷。65歳から大分市生石の自治会長を務めている。自治会長になった時に、救命講習を受けた。「人工呼吸は、妻に言われるまで忘れていました。ただ、心臓マッサージをしなければということだけで」と振り返る。いつもは多くの入浴客がいるがこの日はたまたま男性と2人だけだった。「(表彰を受けて)光栄に思います。男性も元気になられたと聞いて、よかった。初めてのことで驚きましたが、助けたいという一心だった。若い頃からボランティアをしてきたが、これからも続けていきたいと思う」と話した。浜脇温泉には、奥さんの美知子さん(71)も一緒に通っていて、表彰式にも同席した。
 須﨑良一市消防長が感謝状と記念品を手渡して「勇気ある行動に心から敬意を表します。一連の行動がなければ、心肺停止になっていたかもしれない。入浴に関する救急出動は少なからずあります。今後も、何かあれば、またご協力をいただければと思います」と述べた。