大分県と公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団は4日午後2時、音楽祭の総監督で、同財団総裁のマルタ・アルゲリッチ氏の誕生日である5日を「マルタ・アルゲリッチの日」に制定したと発表した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、Web会議システム「Zoom」を使い、会見を行った。
会見が始まり、大塚浩・大分県企画振興部長が「マルタ・アルゲリッチ氏は、別府アルゲリッチ音楽祭の総監督として芸術文化の素晴らしさを大分県の名とともに世界に発信していただいております。制定の趣旨や私たちの思いを伝えられればと思います」。
伊藤京子・別府アルゲリッチ音楽祭総合プロデューサーは「音楽祭は皆さんのおかげで成功させていただき、皆さんに作っていただいた音楽祭と思っています。アルゲリッチが、今何をしているのかなど出てきます」とそれぞれあいさつした。
続いてアルゲリッチの日広報動画の中で、広瀬勝貞大分県知事は「世界では分断や偏見が後を絶ちません。そういった中で、アルゲリッチ総監督には1998年の音楽祭以来、世界中の音楽家の方々と一緒になって平和・協調・多様性の尊重、そして未来を担う子どもたちの豊かな心を育むことの大切さを、ここ大分から発信していただいています。大分県としては、総監督のこれまでのご功績に感謝するとともに心から賞賛の気持ちを込めて、アルゲリッチさんの誕生日である5日を『マルタ・アルゲリッチの日』として宣言させていただきました」と述べた。
制定の趣旨を大塚部長が「1998年の第1回音楽祭から長年にわたり、ミッシャ・マイスキー氏や小澤征爾氏など世界的な演奏家とともに毎年、大分県にお見えになり、数々の名演奏をしていただいています。また、若手演奏家の育成にも力を注いでいます。加えて子どもたちの豊かな感性や心を育てるということを目的としたピノキオコンサートの開催にも支援をしています。大分県では、皆さんと一緒にアルゲリッチ氏の誕生日を祝福するとともに、これまでの功績を感謝し、平和や多様性を大事にしてきたアルゲリッチ氏の思いをともにするため、宣言して芸術文化の輝きを将来に向けてつなげていきたいと思います」と述べた。
続いて、大塚部長が宣言書を公開した。
アルゲリッチ氏のコメント上映後、今後の取り組みについて伊藤総合プロデューサーが「音楽祭は県下全域、韓国のソウル、福岡県北九州市と拠点を結んでいます。コロナ禍の中、様々な催し物を大分県とともに実行できました。今後も多くの人にクラシック音楽にふれていただけるのかなど、考えていきたいと思います」と語った。
その後、質疑応答があった。
広報動画は大分県およびアルゲリッチ芸術振興財団のホームページで、アルゲリッチ氏のコメント動画は同財団のホームページで見ることができる。
アルゲリッチ氏がコメント発表
マルタ・アルゲリッチ氏は今回の会見に合わせて「私の80才を祝していただき、広瀬大分県知事による『マルタ・アルゲリッチの日』の制定を嬉しく思っています。なによりも嬉しかったことは、私の音楽祭を通してクラシック音楽の社会での役割を理解してくださったことです。日本は長年私の活動の一つの支柱を為すものです」
「その中で1994年に大分―別府に初めて訪れて以来、私の人生での大切な『初めて』を経験してきました。それは、公的な役職、自らの名前を冠した音楽祭、椎木正和氏からのアルゲリッチハウスと専用ピアノ マルティータの寄贈を受けたことです。そして今回の『マルタ・アルゲリッチの日』の制定です」
「この一つ一つには形式的なものではない、友情や絆といった人間的な思いやりや、繊細な愛情が込められています。このことは私に何か言葉では表現出来ない感情、我が家に帰り守られているような安心感と言えばよいのでしょうか、そのようなものを与えてくれるように思います。特に別府は、私の家族も同様に親しみを感じています。今までもそうであったように、私は皆さまとともに芸術が社会で役立てられ、人々へ調和や寛容の精神を醸成する一助となり、共に生きる安寧な社会への道と繋がることを信じたいと思います」
「この制定の精神が世界の人々へ届き、今というこの時を大切に過ごし、未来への希望へとつながっていくことを願っています。そのことを大切な友とともに実現するために、私は何度もここ大分県へ戻ってきます。本当にARIGATO」とコメントしている。