ホテルで要配慮者の避難訓練

視力が悪い人などの体験をしながら避難訓練

 大分県内のNPO団体が協働して立ち上げた「おおいた・いとでんわプロジェクト」(谷川真奈美代表)は9日午後1時、ホテルニューツルタで、ホテル避難を利用した災害時要配慮者の避難訓練を実施した。
 おおいた・いとでんわプロジェクトは、災害時に届きにくい、小さな声をつなぐ。企業や団体、個人といった「結び手」と緩やかに連携をし、要配慮者の必要な支援を行う。
 今回は、不特定多数の人が宿泊するホテルを舞台に、災害が発生した場合に必要な避難支援について考えた。
 はじめに、鶴成悦久大分大学減災・復興デザイン教育研究センター長らが「別府市で想定される災害ついて」をテーマに講話。同センターの防災コーディネーターの板井幸則さんも「災害で生き抜く力を養う」と題して、災害発生時に必要な行動について話をした。
 第2部では、実際に避難訓練を実施。視覚に障がいのある人役は視界をさえぎるゴーグルをつけ、高齢者役はおもりを体につけ、妊婦役はお腹に赤ちゃんがいる想定でお腹にふくらみをつけて、身体に障がいのある人役は車椅子に乗って、それぞれ当事者と支援者を体験。視界を遮られることで、回りの状況が分からなくなり、歩きもおぼつかない人が多くいて「怖い」と話していた。誘導する人は、一歩前の情報をていねいに教えながら「大丈夫ですよ」と安心するような声かけを続けた。
 その後、グループワークでは「どういった支援が出来るのか、知恵をもらった。災害時だけではなく、平時でも活用できそう」「どうしてほしいのかは、人によって違うと感じた」「どれくらい不自由なのか体感できた」などと話した。想像するよりも、体験することで、不自由さを知り、どんな支援が必要かを実感した様子だった。
 ニューツルタの門脇邦明マーケティングマネージャーが「色々と学びのある場だった。自分たちだけで何とかしようとしがちですが、チームを作ってお客様にも手伝ってもらい、生き残っていくことを学ばせてもらいました」と感想を述べた。
 最後に、鶴成センター長が「災害は思った通りのことは起きない。要配慮者が宿泊した時、どうしたら避難ができるか考えられたと思う。行政頼みではなく、地域の人たちと話し合うこと。自分たちに置き換えて、どうやってつなげていくかを考えてほしい」と講評した。