部活中に息子亡くした工藤さん夫婦

亡くなった剣太さんの写真と共に講演する工藤さん

 平成21年に剣道の部活中に行き過ぎた指導で倒れて亡くなった、竹田高校の工藤剣太さん(当時17)の両親を囲んで「大切な人を守るために私たちができること」をテーマに、講演会が1月31日午後1時半、別府市中央公民館で行われた。平山れい子となかま達が主催。
 工藤さんは、剣道部の主将を務め、熱射病(重い熱中症)の症状があったにも関わらず、当時の顧問が「演技をするな」と蹴るなどの暴行を加え、激しい練習をさせ続けたことで工藤さんは倒れ、病院に運ばれたものの、その後、亡くなった。県や学校から誠意ある対応がなかったことに憤った両親は、裁判で責任を問うた。これまで、指導者である公務員個人に責任を問うことは難しかったが、両親の思いが司法を動かし、顧問への重過失を認め、賠償金の一部を負担させるように県に命じる判決を出した。
 父親の英士さんは当時を振り返り「以前、別の学校で指導という名のいじめを受けて、辞めた子がいた。何の指導もせず、竹田高校に赴任し、4カ月後にこの事件が起きた。それまでの顧問は、試合前に応援メッセージを生徒1人ひとりに書いてくれたしていて、剣太は竹刀が折れても大事にしていた。事件が起きる1日前に合同で練習が始まり、その時は、顧問は練習には参加していなかった。足が動かなくなるまでやれという課題が出されていて、数人で終了の報告に行くと、『どうやってここまできたんか。歩けてるやないか。明日の練習は覚えておけよ、と言われた』という。当日、車の中で剣太は何もしゃべらなかった。9時から練習を始め、休憩で最初にするのは、顧問におしぼりと水を持っていく。あまり水を飲むと動きが悪くなり、また叱られることやもう1回休憩があると思い、子どもたちはあまり水をとっていなかった」と倒れるまでの経過を説明。
 その後、パイプ椅子を投げつけてきたり、面をつけなおしていると、休んでいると言われ、暴力を振るわれたことや他の部員も熱中症の症状があったこと、病院にかけつけると「そんなに激しい練習はしていない」と言われたことなどを話した。当時、弟も同じ剣道部にいたため、両親はその後、弟から真相を聞くことになる。
 「殺したのは顧問で、唯一止めることが出きた大人である副顧問もどうしても許せなかった。弁護士は負けるといったが、訴えた。受理はされたが、棄却され、個人責任は問えなかった。どうしても納得いかない。こういうことを起こした者を何故、国が守るのか。国や県が払った金額を個人に負担させるための裁判をした。学校の外で同じ事すれば、絶対に逮捕されるのに、学校の中なら何故よいのか」と悲痛な思いを語った。
 聞いている人の中には、涙を流す人もいて、子どもたちの命を守るために何が出来るのか、それぞれ考える時間となった。