人工呼吸器の詩人・芦刈さん偲ぶ会

芦刈さんのビデオを見たりして
思い出を語り合った
会場には、芦刈さんの作品や
思い出の品が飾られた

 難病の筋ジストロフィーと闘いながら「人工呼吸器の詩人」として活躍した、芦刈昌信さん(享年46歳)を偲ぶ会「笑進笑明 縁~出会いに感謝」が15日正午、ホテル別府パストラルで開催され、芦刈さんの仲間たち約110人が出席した。
 芦刈さんは、臼杵市野津原町出身で、幼少期に筋ジストロフィーを発症した。筋ジストロフィーは、骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称で、筋力が低下して運動機能など様々な機能障がいをもたらす難病。芦刈さんは、24時間人工呼吸器を必要としていた。
 西別府病院で療養をしながら、小学生の頃から大好きだった詩の創作活動を行い、病院内に「大分別府五行歌会」の設立に携わり、会長を務めた時期も。書きためた詩を「詩集 あなたと出会うために」として出版。令和2年には、クラウドファンディングで資金を募り、2冊目も出版した。
 一方で、地域で自立した生活をしたいという思いも持ち続けていた。しかし、院外で自力で生活することは難しいと考られていた。心配する多くの人をよそに、1年かけて訓練をするなど準備を重ね、令和3年8月に、38年間過ごした西別府病院を退院。皆に支えられながら、自立生活をスタートさせた。大好きなラーメン屋にも好きな時にでかけ、桜をみたり生活を楽しんでいた。仕事も、NPO法人自立支援おおいた(後藤秀和理事長)に勤め、イベント実施や講演活動も熱心に取り組んだ。
 オンラインで全国の仲間とつながり、筋ジス病棟の生活向上、患者の社会参加などを推進した。昨年秋から少し体調を崩し、入退院を繰り返していたが、今年1月23日にこの世を去った。
 偲ぶ会では、芦刈さんの作品や子どもの頃からの思い出の写真、使っていた車椅子、仲間からの詩のメッセージなどが飾られた。後藤理事長が「こんなに多くの人に参加してもらい、ありがとうございます。あっしー(芦刈さん)の好きな桜の季節に偲ぶ会を開けて、うれしいです。あっしーは、よく頑張りました。1年4カ月でしたが、地域で生活をし、凝縮された素晴らしい人生だったと思います。障がいがあっても地域で暮らしたいという人はいます。これからも支援していきたい。今日は、皆で彼と過ごした時間を共有したい」とあいさつ。
 父親の幸巳さん(80)が「こんなに大勢の人に集まってもらい、心から感謝します。こんなに多くの人の力を借りて生活をしてきたんだなとつくづく感じます。皆さんもお体に気を付けてほしい」と述べた。
 生前の活動をまとめたVTRを上映して、ありし日の芦苅さんを偲んだり、主治医や恩師、友人らが思い出を語り合ったりして、別れを惜しんだ。