「問われて名乗るもおこがましいが…」――歌舞伎の演目「白波五人男」=青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)の一場面は五人男が次々に見栄を切って、名乗りを上げる。
別府ロータリークラブ(大川裕暁会長)の新年親睦家族例会余興最大の見せ場。
この物語、江戸期は延享年間(1744~48年)尾張出身の盗賊で実在人物の日本佐衛門(にっぽんざえもん)がモデル。当時の戯曲家、河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)の手によって製作、1862(文久2)年に初演となった。歌舞伎世界の世話物(せわもの)として、大衆の支持を得、義侠心あふれる世話物は今日でも舞台や映画に生き続けている。
創立72年になる別府RCの歴史を研究する永松直樹さんによれば、初演は65年前の1959(昭和34)年、8代目別府会長の藤沢徳太郎氏(新紙屋)年度。五人男は、杉原時雄(亀の井バス取締役)、栗林太郎(栗林医院長)、児玉房雄(ダイヤ産業社長)、宮岡謙二(亀の井ホテル社長)、八田秋(九大温研所長)の各チャーターメンバー。当初は「まつり」に特別出演していたが、64(昭39)年、東京オリンピック開催年度、13代目宮岡謙二会長の時代、歳末チャリティーショーが国際観光会館(現トキハ別府店)で開かれた。ここで堀永忠次郎別府RC親睦委員長を監督に、吉村満氏(クスリのヨシムラ社長)、根ノ木正男氏(一茶社長)、矢野良一氏(九大教授)、牧野恭三氏(清風荘社長)、岡嶋大弼氏(岡嶋医院長)が五人男となり「ロータリー奉仕の理想」やRの理念を織り込んだ台詞を作成して組織PR。今日の別府RCでは、各自が自己紹介を兼ねて名乗りを上げ、「舞台度胸」の養成による、新入会員の「登龍門」であり、「かくし芸」の定番として続けている。衣装やメイクは駅前のエッチ美容室がほぼ忠実に歌舞伎世界を再現。各人の「名乗り」は長セリフのため、黒子が傍らに寄り添ってサポートするという念の入れよう。
今回は女性会員1人を含む「白波四人男と花魁花笠道中」と銘打っての舞台。配役演じ手は次のとおり=敬称略=▽日本駄右衛門(永松秀基)▽弁天小僧菊之助(太田哲宏)▽花魁衣恵太夫(中島衣恵)▽赤星十三郎(甲斐伸治)▽南郷力丸(明石耕司)