佐藤樹一郎大分県知事、県政の基本方針①

佐藤県政の全容を意欲的に解説

 ◇…就任から1年を越した佐藤樹一郎大分県知事、5期20年をつとめた広瀬勝貞前知事の県政施策を継承、さらに発展進化を加えようとする。佐藤知事は、時事通信社(本社・東京都中央区銀座=境克彦社長)が主宰する内外情勢調査会大分県支部長として、4月懇談会で今後の県政基本方針を語った。1時間42分、微細にわたる県政全般の試み、連載して今日新聞御愛読の皆様に届けることにした。以下は講演の「全容」。…◇

【市町村との連携 新しいおおいた共創会議】

 県と市町村が緊密に連携し、「安心元気・未来創造」の大分県づくりをともに推進することを目的として「新しいおおいた共創会議」を設置した。県知事と18市町村長が一堂に会し、県全体で抱える重要課題に対して、県と市町村が協働し、より効果的な施策展開を図る(毎年2回実施予定)。
 第一回は昨年8月28日。
 ▽大分県長期総合計画及びまち・ひと・しごと創生大分県総合戦略について
 ▽県と市町村との連携課題について
 ▽新幹線の整備等について
 ▽こども子育て支援について(「こどもまんなか応援サポーター」を合同宣言)
 第二回は去る2月14日。
 ▽大分県新長期総合計画について、持続可能なコミュニティづくり。その他として、
 ▽災害に強い県土づくりと危機管理の強化
 ▽地域の特色を活かしたツーリズムの推進と観光産業の振興
 ▽戦略的・効果的な企業立地と産業集積の推進      
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【市町村との連携 市町村長との意見交換会】

 各市町村から提案があった議題について、市町村長と意見交換を実施した(毎年1回実施予定)。引き続き、市町村との連携強化を図っていきたい。
 参加者は知事、各市町村長、県副知事、県関係部長、大分県市町村合同事務局長など。
 まず、「地域公共交通ネットワークの維持・確保について」日田市から提案を受け、日田市長を座長に大分県、大分市、佐伯市、宇佐市、豊後大野市、日出町が参加。▽福祉部局と交通部局との連携等による高齢者の移動手段の確保▽地域公共交通ネットワークの維持・確保――なども徹底討議した。
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【産学官での連携 グリーン・コンビナートおおいた推進会議について】

 大分コンビナートの持続的成長とカーボンニュートラルの両立に向け、昨年8月に産学官連携の「グリーン・コンビナートおおいた」推進会議を立ち上げた。
 この会議では、大分コンビナートが2030年、2050年を見据えて向かうべき方向性を構想として取りまとめるため、コンビナート企業の現地代表の方をはじめ、大分大学の北野学長、コンビナート立地市である足立大分市長、その他、経済産業省や国土交通省、国立産業技術総合研究所にも参加していただき、積極的な議論をおこなった。
 1月には「グリーン・コンビナートおおいた推進構想」を取りまとめたところ。今後は、この構想を元に、官民投資を積極的に呼び込みながら、関係者一丸となった取組を進めていきたい。
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【産学官での連携 大分県広域交通ネットワーク研究会】

 豊予海峡ルートや東九州新幹線、中九州横断道路等の広域交通ネットワークについて、整備効果や検討課題等を学術的見地から議論するため、「大分県広域交通ネットワーク研究会」を立ち上げた。
 座長に、元国交省 国土審議会会長で、名古屋都市センター長の奥野信宏氏、その他、県内外の大学教授や研究機関の職員(九州経済調査協会 岡野氏ほか)など学識経験者9名で構成。
 今後も、研究会の報告書を基に、検討課題の克服や、隣県を含めた関係機関との連携と機運醸成を行うなど、しっかり取組を進めている。
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【R6年度当初予算の解説】

 県政ふれあい対話を通じて県内地域・各種団体の皆さんから直接伺ったお話や、意見・提言、市町村をはじめ、産学官との連携に向けた議論を踏まえ、令和6年度予算案を県議会に提出、3月27日にご承認いただいた。
 令和6年度予算は「誰もが安心して元気に活躍できる大分県、知恵と努力が報われ未来を創造できる大分県の実現に向け、人口減少対策の強化や産業の振興を進めるとともに、未来へつなげる投資を促進する」ことを基本方針とした。
 この結果、令和6年度当初予算の総額は、6898億800万円で、前年度7月補正後予算額と比較すると348億300万円、率にして4・8%のマイナス。ただしこれは、コロナ対策を減じた4年ぶりの平常時予算となるため。
 一方で、こども・子育て支援の充実や、人材の確保・育成、広域交通ネットワークの推進、DX・GXへの挑戦など、意欲的な施策を盛り込んだ予算として編成に心血を注いだ。

(主な予算の内訳)
 「安心・元気・未来創造」の大分県づくりを推進するために用意した20億円の予算特別枠「新おおいた創造挑戦枠」には133事業、28億4400万円を計上。
 こども・子育て支援の充実なども含む「社会保障関係費」については、こども医療費の制度拡充などを行う一方で、新型コロナウイルス感染症対策の廃止(△14・5億円)などのR6年度特有の事情により前年度比6億600万円、あくまで数字上は率にして0・7%マイナスの909億5500万円。
 「投資的経費」では、大分空港海上アクセス整備事業の終了(△26・7億円)などにより、総額は前年度比43億500万円、率にして2・9%マイナスの1423億8200万円。一方で公共事業は、頻発・激甚化する自然災害に対して、県民の命や生活を守れるよう前年を上回る額を確保できた。

(財政の健全性)
 「財政の健全性」について、財政調整用基金残高は、現時点ではR6年度末で約258億円となるものの、R5年度決算剰余金の積立てや、執行段階での工夫・節約などにより、行財政改革推進計画の目標であるR6年度末330億円の残高確保を目指している。
 県債残高については、R6年度末に総額ベースで約1兆576億円、臨時財政対策債等を除く実質的な残高では約6232億円となる見込み。未来の世代に向け、災害に負けない力強い大分県を築いて行くために必要な事業は積極的に実施していく。財政運営の健全性を維持していくため、今後も適正に県債残高を管理していく覚悟だ。  (つづく)