「処分」の意識

 自衛隊の不祥事が相次いでいる。防衛省は「特定秘密」の不適切な取り扱いや、潜水手当の不正受給、内局職員のパワハラ行為などを理由に218人を処分した。制服トップの陸海空の幕僚長らも枕を揃えた。
 本来自衛隊は言うに及ばず、「軍隊」などという組織は「パワハラ」の巣みたいな所で、目クジラ立てて弱者救済みたいな、柔らか~い対応では、立派な戦闘技術者は育ち得ない。指揮官にはなり得ないのではと思う。
 とくに国防産業からの収賄、隊員の手当や特定秘密取り扱いに半数以上の処分を下した海上自衛隊は、トップの海幕僚長が更迭処分。海自の大量処分は、原因の一つに温存された「伝統」がある。逃げ場のない艦船での人間関係。さらにさかのぼると太平洋戦争の終結直後、軍人は公職追放されて、一切の公務員世界から「出禁」となった。唯一海軍は列島防衛最後の砦として、横浜に海軍復員局を創設して、有事に備えた。このあと朝鮮戦争のぼっ発で、機雷処理や軍事物資の輸送に名目上、民間の傘下で活動再開して温存勢力の一つとなった。敗戦環境のなか、国防再構築の礎となった歴史が、海自優位の環境となったか。
 軍隊創立の歴史から見れば、日本陸軍はドイツの旧プロシア、海軍はイギリスと発生の根源も後の評価につながったようだ。
 防相がいくら「綱紀粛正」を唱えても少々の事では激変はしない。自衛隊はじめ、防衛省全体の見直しが求められる。そもそも憲法下でその存在が違憲とする事自体、自衛官への基本的「人権」の尊重に抵触する恐れがある。政治の国防に対する無知と、万年平和ボケも大きな罪である。
 25年採用予定の自衛官の定数が50%と前代未聞の数字となった。「処分」された218人の制服、背広組は普通科で2コ中隊の戦力喪失になる。これで愛すべきふるさと日本が守れるか。処分する前に本来のシビリアンコントロールを堅持するなら防衛大臣、副大臣、政務官が自身の処分を願い出るというのはないのか。
 兵を切るは易し、自らの命を断つは難し。そしてこの国を守る者は居なくなる。
       (陽)