古くて新しい「湯治場」を

鍋山エリアでの開発撤回などについて説明をする長野市長

 長野恭紘別府市長は14日午後1時半、市役所で記者会見を開き、鍋山エリアで「東洋のブルーラグーン構想」実現のための公園整備について、上程中の議案を撤回し、鍋山エリアでの開発を行わないことを発表した。
 長野市長は「多くの市民と意見交換をしてきた中で、ブルーラグーン構想のコンセプト自体に反対するわけではないが、鍋山エリアを開発することは、今後の温泉の湯量減少につながるのではないかという強い危惧をお持ちでした。特に、温泉を利用する事業者から、10年先を見据えた事業も大切だけれども、今を生きていくのが大変。不安定な温泉供給を何とか安定的に利用できるように、市に力を貸してほしいという切実な思いをいただきました。市長として、市民の幸せのための仕事が大切な人々の心を不安にし、分断してまで公約を推し進めることは、正しい道ではないと判断した」と話した。
 一方で、ブルーラグーン構想で示した古くて新しい観光の形「新湯治・ウェルネスツーリズム推進事業」を進めるための調査費を新たに議会に提案することも合わせて発表した。
 「東洋のブルーラグーン構想というと、単に巨大露天風呂を作るための事業と思われがちだが、本質は、箱ものをつくるのではなく、昔から別府で行われてきた湯治を進化させた新湯治を医療、美容、健康等と融合させ、拠点施設をつくり、そこから市内事業者へ経済効果がさらに広がる、エコシステムを構築していくこと」と構想の本質は、「モノ」ではなく「コト」であり、「ウェルネスツーリズで新たな別府観光のブランディングをしたい」との説明を繰り返した。
 新たな候補地については「全市的に市有地を基本に、幅広く、私たち自身で検討する」とした。構想の考え方について「8年前は、アイスランドのブルーラグーンのようなものを想定していたが、コロナ禍になり3年前から規模感に捕らわれず、質の高い別府らしいものとを言ってきた。しかし、説明が足りなかった」として、ブルーラグーン構想の本質は変えずに、ウェルネスツーリズムを推進する考えを示した。
 最後に、「今回の件で多くの皆さんの分断を招きかけたことは、ひとえに私の責任です。しかし、これを機会に別府市民が今まで以上に結束をして一丸となって現在の課題を克服し、新たな価値の創造に向かって歩を進めることできると確信している」と述べた。