第2次世界大戦の終戦で旧満州奉天から引き揚げた野村純子さん(88)=大分市一木=を発起人代表に「内地地蔵(ないちじぞう)を建てる会」がこのほど発足した。
ひたすら「内地」を目指しながら帰れなかった人々の魂は今も満州に、あるいは朝鮮半島や南の島々に寂しくとどまっている。そんな魂たちに「ここへ帰ってきなさい」と呼びかけるお地蔵さまを、せめてもの慰霊に作りたいと活動を始めた。
建てる会の発起人に「あしたのジョー」で有名な漫画家ちばてつやさんのほか由布院亀の井別荘の中谷健太郎さん、シネマ5代表の田井肇さんらが名をつらねる。
ちばさんも奉天引き揚げ者で、内地地蔵のデザイン画を描いた。もんぺ姿の母親が「ここへ帰ってきなさい」と両手を広げているポーズは、宗教に関係なく慰霊できる。
制作に当たるのは別府市在住の彫刻家で日展会員の原田裕明県立芸術文化短期大学名誉教授。
内地地蔵は高さ2メートルのブロンズのものとする。制作費は約500万円かかり寄付を募る。有力者による大口寄付よりも市井の人々の浄財を呼びかけており、一口千円。大分銀行大在支店普通口座7615913、内治地蔵を建てる会代表野村純子さん宛に振り込めばよい。
設置場所は未定だが、2年後の令和6年の完成を目指し、クラウドファンディング(CF)でも寄付を呼びかける。
野村さんは中国の奉天春日小学校6年生のとき終戦を迎えた。そのまま奉天に残り、現地の浪灘高等女学校に進学。満州コロ島から引き揚げ船に乗り、昭和21年8月、京都舞鶴港に着いた。15歳だった。
野村さんは「現在のウクライナ状況を見るにつけ、戦争の悲惨さ、被災した難民の苦痛をひしひしと感じます。世界が戦争という手段を捨てて、命がけで平和を築き上げていきますように。その強い思いを『内地地蔵』に刻み、次世代へ伝えていきたいと考えています」と話している。