別府ONSENアカデミアが8、9日にビーコンプラザで開催された。温泉に関するシンポジウムや発表、温泉地の首長らによるディスカッションなどが行われた。
開会式で、長野恭紘別府市長は「ラグビーワールドカップでは、欧米オセアニア地域から多くの人が訪れてくれて、別府の温泉文化を発信してもらえたと思う。健康や美容、エネルギーなど様々な切り口があると思いますが、温泉は無限の資源ではありません。原点に立ち戻り、温泉文化を守り、発信していきたい。様々な議論が出来ればと思います」とあいさつ。
林千晶ロフトワーク代表取締役と長野市長による対談「Lost&Found」が行われた。林さんは2000年にロフトワークを起業し、年間200を超えるプロジェクトを行っている。2009年に別府で開催された混浴温泉世界等に携わった。林さんは「今年は、100人の職員でサマーキャンプを別府で行いました。温泉がある所は他にもありますが、別府は昔と今、プライベートとパブリックなどの垣根がなくて、行ったり来たりしているイメージ。魅力がある一方で、もったいない部分もある。例えば、女性にとって気持ちよい宿泊施設が少ない。団体客用の大きな施設が多く、母親と2人で行きたいと思える宿泊施設が少ない」などと話した。
シンポジウムでは「これからの銭湯文化」と題して、バスクリン銭湯部の小松歩部長をコーディネーターに、別府八湯温泉道名人会の八木みちるさん、東京都杉並区高円寺にある銭湯「小杉屋」3代目の平松佑介さん、小杉屋の番台でイラストレーターの塩谷歩波さんがパネリストとして参加。平松さんは「銭湯はお風呂がない時代のビジネスモデルで、内風呂が増えている中で、役割が終わったと思っている経営者が多い。しかし、銭湯に救われたという若者が増えている。日々、清掃をして気づいたことをアップデートしている」と取り組みについて話した。塩谷さんは「体調を壊した時に、銭湯に入って話をすることで素直な気持ちになって、自分らしさを取り戻せた。辛い時に寄り添ってもらえるもの」とした。八木さんは「別府にとって、温泉は完全に日常。共同温泉を守っていってほしい」と話した。
また、全国の温泉地の首長などによる温泉に関するディスカッションもあり、長野市長、西田陽一別府市旅館ホテル組合連合会長、窪浩政北海道音更町十勝川温泉観光協会事務局次長、門脇光浩秋田県仙北市長、佐藤和志秋田県田沢湖・角館観光協会長、池田泰久秋田県乳頭温泉組合長代理、金井慎一郎静岡県熱海市副市長、越智英幸愛媛県道後温泉旅館協同組合事務局長、池田榮一佐賀県嬉野温泉観光協会長、北山元熊本県黒川温泉観光旅館協同組合事務局長、山本麻衣環境省自然環境整備課温泉地保護利用推進室長がパネリストとして参加。
温泉地におけるインバウンド受け入れのあり方について、今回のラグビーワールドカップでのタトゥーの対応については、地域によって違いが出た。道後温泉では外湯は良いが、ホテル・旅館ではNG、田沢湖・角館ではよほどのことがない限り、入浴ができ、十勝川温泉は原則ダメだという。議論は出るものの、各旅館・ホテルに任せているケースも多く、統一したルールはないところが多い。別府市では、タトゥーがあっても入れるマップを作った。長野市長は「楽しみに来て、入れなくて残念ということを防ぐためにも、マップを作って事前に情報を提供している」。西田会長は「1つのモデルケースとして検討したが、日本人客にアンケートをとったところ3割が反対だった。インバウンドも大切だが、日本人客の方が多い中、3割というのは大きいと思い、各施設に判断をゆだねる形になった。外国人客も、多くの人が日本では好まれていないことを知っている」と説明した。
さらに、各温泉地で健康と美容に関する取り組みなどについても紹介があり、議論を深めた。