別府市末広町の医療法人博慈会内田病院(内田明宏院長)は、リハビリチームが昨年10月作成した「温泉見取り図」について4日午後1時15分、長野恭紘別府市長を訪れて説明をした。
昨年11月の第36回大分県病院学会で発表したもの。住み慣れた地域でいつまでも暮らし続けるために、退院後の患者の入浴に関する調査を行ったところ、自宅にお風呂がなく、温泉を利用している人が44%いることが分かった。それまでも患者から温泉入浴に関する情報は聞いていたものの、患者によって情報がバラバラで統一感がなく、職員も別府出身者でなければ温泉の事情がよく分からないということもあり、理学療法士の野村美友さんと作業療法士の宗美幸さんが病院周辺の市営温泉や共同温泉の見取り図を作り、帰宅後の入浴がスムーズに行えるように、リハビリに活かそうと取り組んだ。
今回調査したのは、市営温泉は永石温泉、不老泉、浜脇温泉、竹瓦温泉、海門寺温泉。共同温泉は、紙屋温泉、此花温泉、住吉温泉、松原温泉の計9カ所。入口の様子やトイレ、浴槽、脱衣所の写真を掲載して、手すりの有無、段差など高さを細かく測った。
学会で発表したことで、他の病院からも問い合わせがあったり、病院のリハビリ室に掲示して、誰でも見ることが出来るようにしてあることから、市高齢者福祉課職員が見て、ケア会議で使いたいと問い合わせたことなどがきっかけで輪が広がり、長野市長に説明をする機会が設けられた。
安藤正明内田病院事務長は「病院として指示したものではないが、自分たちで患者さんのためにと考えて作りました。これからのケアに生かしてもらえればと思う」と話した。
野村理学療法士は「家の中ではバリアフリーにしていたりするのですが、温泉は昔ながらの造りのところも多い。階段や段差、床に座るという動作のリハビリを嫌がる患者さんも多かったのですが、一緒に見取り図を見ながら、温泉に入るために必要なリハビリについて話し合うと、患者さんも前向きに考えて取り組んでくれるようになりました。リハビリにおいて、早い時期にアプローチできるようになりましたが、まだ、調査していない温泉に行っている患者さんもいるので、もう少し調査を進めていけたらと思います」と話した。調査は温泉の営業終了後に行うことが多く、夜中になることも多かったという。共同温泉は自治会が管理しているところが多く、自治会長に連絡をとって許可をもらうのにも苦労をしたという。
長野市長は「全体の配置だけかと思ったら、浴槽の深さや手すりの有無までこんなに細かく調べてあり、驚きました。我々にとっても考えるきっかけになると思う。こういう所に手すりがほしいとか、プロの目で見たアドバイスをもらえればと思う。協力できるところはしたいので、今後とも頑張ってほしい」と激励した。