「紫電改」のプロペラではない

神戸大学大分チームが回天大神基地
記念公園のプロペラを調査

 日出町大神にある回天大神訓練基地記念公園の片隅にある、第二次世界大戦時の局地戦闘機「紫電改(しでんかい)」のプロペラではないかと展示されていたものが、形などから日本海軍の艦上攻撃機「天山」または、陸上攻撃機「一式陸攻」と呼ばれる機体のプロペラであると判明した。
 調査を行ったのは、神戸大学が行っている市民参加型海中遺跡調査の大分メンバー5人。日出町周辺の別府湾を重点調査地域として、戦後に海中投棄された人間魚雷「回天」をはじめとする戦争遺跡などを調査していた。回天を調査する中で訪れた公園でプロペラが目に入り、「本当に紫電改のものなのか」と疑問をもち、調査を行うことに。
 プロペラは、2004年に大分市沖の海中から日出町の底引き網漁師・戸田住人さんの網にひっかかったもの。当時の調査でははっきりしたことが分からず「紫電改かも」ということで展示されてきた。大分チームは7回にわたって現地でプロペラの長さの計測、重錘などプロペラの角度の可変ピッチ、減速機構の歯車などを調べ、航空技術史遺産研究会に分析を依頼。米国ハミルトン社のもので、遊星平歯車を採用し、歯車が10個であることから、紫電改ではないと結論づけた。
 大分チームは、50年近く海に沈んでいたため、損傷もあるものの、「翅の折れ曲がりが軽度で、4枚とも残っているのは貴重な戦争遺産」としている。安井翔代表は「分解をして調査をすれば、もう少し分かることがあると思うが、腐食が激しいので分解は難しい。どれについていたものかは機体を引き揚げる必要があるが、紫電改とは違う。回天の調査に協力してくれた魚住修三さん(大神回天会代表、今年1月に逝去)に報告すると『そんなことまで分かるんですね』と驚いていた」と話した。