
(左から2人目)

「男は天下を動かし 女はその男を動かす」
大分市在住の井上敬子さん(77)は6日午前10時、太平洋戦争当時の山本五十六連合艦隊司令長官が揮毫した短冊(たて36㌢、横6㌢)と冊子「芸者おふじ思い出ばなし」400冊を別府市教育委員会に寄贈した。
井上さん、仲介者の多田利浩前日出町議会議員、寺岡悌二教育長、津川文隆市社会教育課長、檜垣伸晶別府市美術館長が出席した。井上さんと仲介者の多田さんは、ボランティア仲間。
別府市にあった旧日本海軍指定の料亭「なるみ」で、芸者の「おふじ」さんが乗組員と親しくなった。山本連合艦隊司令長官が「しばらく会えないかもしれないから、何か書いてやろう」と言い、おふじさんを含む3人が短冊を受け取ったという。連合艦隊の別府入港は昭和15年11月が最後とあり、短冊を贈った時期はそのあたりではないかという。
短冊は、井上さんの父溝口孟さん(6年前に逝去)の遺品で、溝口さんは慶応大に在学中、海軍に志願し、築城海軍航空隊(福岡県)などに配属。溝口さんは子どものころからおふじさんと面識があった。戦後、溝口さんは、津久見市に移り住んだ。おふじさんとの交流は続いており、溝口さんが海軍の教官を務めていた縁で、おふじさんから譲り受けたという。表装して軸物として二重の桐の箱に入れ、大切に保管していた。掛け軸を引き継いだ井上さんは、多田さんに相談。多田さんは「なるみに残した物だから、別府でお見せしたらどうですか。図書館に郷土資料館ができるので、そこでお披露目したら」と提案。市教委に相談したところ、市美術館への寄贈が決まった。
井上さんは「おふじさんは約50人の若い軍人さんと親しくなった。生き残ったのは3人で、うちの1人が父。そのこともあり、短冊をくれたのではないか思う」と話した。
贈呈式で、寺岡教育長は「このたび、井上様、多田様から、山本五十六長官の掛け軸と小冊子400冊を別府市に寄贈していただき、ありがとうございます。小冊子を見ますと、芸者おふじさんの苦労されたお話、山本五十六氏の思い出、若くして尊い命を亡くして散った海軍軍人皆さまの記憶、記録を後世に伝えたいという思い、二度と戦争がない時代を迎えてほしいという訴えが読み取ることができました。今後は、揮毫や冊子については、二度と戦争が無いように、また山本五十六長官や軍人皆さまへの不戦の誓いを後生に繋げるため、別府市で大切に保管し、皆さんに活用させていただきます」と述べた。
式終了後、展示方法などについて檜垣別府市美術館長は「本格的な展示は考えないといけませんが、当面は市役所1階の美術館収蔵品コーナーで市民の皆さんにご披露する予定。冊子は、市役所社会教育課と市美術館の両方で行うが、時期は未定です」と話した。
