国の文化審議会(佐藤信会長)は17日、同審議会文化財分科会の審議で、新たに重要有形民俗文化財の指定等について、文部科学大臣に答申を行った。大分県内から、「別府の湯突き用具」(394点)は登録有形民俗文化財に登録すべきとされた。官報告示後に正式決定されると、県内では初の登録有形民俗文化財となる。
「べっぷの文化財」第48号(平成30年3月発行)によると、千葉県上総地方で井戸掘りに使われていた掘削技術「上総掘り(かずさぼり)」が別府に伝わり、温泉掘削に用いられるようになったという。先端に鉄管のノミをつけて掘り進むにつれて竹ヒゴを継ぎだしていくため、地中深く掘ることが出来た。軽量で弾力性のある竹を使うことで、わずかな人数でも掘り進めることが出来るのが特徴。
別府では、温泉掘削を「湯突き」と呼んでおり、櫓を組み上げて行っていた。上総掘りによる湯突きがいつごろ伝わり、広まったのかは定かではないが、この技術の導入により、それまで自然に湧き出していた温泉を活用していたのを人工的に掘ることが出来るようになり、源泉数が飛躍的に増加して旅館も増え、観光地としての別府温泉の発展に大きく寄与した。
ノミはすぐにすり減るため、1日2~3本、多い時には5本ぐらいを取り替えながら使い、自分たちで修理もしていたため、当時の職人は鍛治技術も持っていたという。当時の別府の職員が他の地域で温泉掘削に携わったケースもあったとか。昭和20年頃まで行われていたが、機械化により段々となくなった。
別府市が所蔵する湯突き用具は、千葉県生まれの上総掘り職人で大正のはじめ頃から別府で温泉掘削をしていた斎藤清太さんの家族から寄贈されたもの。掘削用具、仕上げ・管理用具の他、ノミがすり減った時の鍛治などに使う工作用具、掘削中にノミが温泉孔に落ちた際に取り出すための非常用具など一式が揃っている。現在、野口ふれあい交流センターで展示をしている。
寺岡悌二教育長は「別府が日本を代表する温泉地へと発展する原動力になり、温泉の泉源掘削の発展に寄与した技術。先人の努力が今につながる、温泉の歴史。一層誇りとできる登録答申だと思う」と話した。