他人事ではない!

 トランプ大統領の人種的差別が止まらない。コロナウイルス感染拡大防止のため「自粛」していた大統領選の大型集会で、黒人暴動の元凶は、カラードを主体とした「極左勢力」とした。白人至上主義を常に感じさせる大統領、有色人種への反感を煽る。右も左も同じ国民ではないか。
 黒人暴動の鎮圧には州兵や国軍を投入すると意気まく。何を勘違いしているのか。
 有色あるいは非白人系が建国245年のアメリカ合衆国に果たして来た、命を懸けた貢献を戦争の舞台から見てみたい。
 時はアメリカ独立戦争の時代、奴隷だった黒人部隊が組織され、南北戦争まで運用され、多くの犠牲者を生んだ。第一次世界大戦ではヨーロッパ西部戦線はベルギーに投入された黒人部隊が、守備地死守を命令され、終戦直後まで、この地を守りきった。
 太平洋戦争ではハワイ、カリフォルニア移住の日系2世が「志願兵」として参戦。一部は南太平洋諸島の上陸作戦で、対日本陸海軍戦に投入され、元祖国に対し刃を向けさせられた。ハワイ出身の日系2世で編成された442連隊、第100大隊はヨーロッパ戦線に投入され、ベルギーで包囲された白人部隊救出のため、着剣突撃を強行、部隊ごと叙勲の栄に浴した。また「インデアン」と呼ばれた先住民も部隊編成され、死傷率の高い無線通信兵として先住民の言葉が暗号として用いられた。
 黒人部隊は当初、食糧、兵站輸送の分野に投入されたが、その敏捷性や戦時の反射能力など総合的な戦闘能力や特有の知性が評価され、朝鮮戦争からベトナム戦争に至るまでに存在価値が大きく認められた。黒人の公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師(ノーベル平和賞受賞者)は南北戦争に続く再建の時代を築いたが、1968年、暗殺。黒人兵は悲痛な思いを乗り越えて戦闘を維持継続した。アメリカが参戦した戦いにはメキシコをはじめとする中南米、フィリピン系、ベトナムでは韓国人部隊も参戦して、アメリカの戦いに命を捧げた。アメリカは今日の地位を築くまでに、多くの非白人系の血も流した。白人も有色人種も血は同じ赤色だ。
 アメリカ海兵隊のモットーには「変わらぬ忠誠」がある。戦闘に臨む兵に対し指揮官は必ず「お前たちは国のため、家族のために戦うのではない。ともに戦う者のために戦うのだ」と、この言葉を投げかける。
 前国防長官は元海兵隊員で勇猛果敢な将軍として知られたジェイムズ・マティス。大統領令のシリア撤退に抗議して職を辞した。暴動の対処を痛烈に批判している。歴代大統領も、国軍OBも口々に。
 ドナルド・トランプ(74)第45代アメリカ大統領は政治家も軍人も経験した事のない初めての大統領。
 他人事ではない。我が国の政府高官はコロナ感染の実態を評価して「(他の国とは)民度が違う」と言いのけた。この発言を他人事(ひとごと)と片づける意識が差別を招く。  (陽)

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