「ワクチン」無いなら、作れ!

 「新型コロナウイル感染症」対策には何といってもワクチン接種が頼みの綱だ。効果や副作用を心配する声が多いが、マスコミの悲観論的コメントが流れるばかり。英国では5千人で2例、イスラエルでは7千人に1例が何らかの反作用が生じている。「針小棒大」な評価ばかりが横行する。
 イスラエルは国民の平均年齢が低い。国民全体が「検体」のつもりで世界に先がけて取り組んでいる。EUは英国製ワクチンの契約条項を守れと、配布(配当)数の確保に躍起。何かとケチを付けたがる日本を尻目に、離脱した英国に新たな条件を付けて交渉に当たる、強かなねばり腰は見上げたものだ。視線を日本に戻すと、諸外国産のワクチンに頼るがあまり、専ら少子高齢化社会に対応する、我が国製薬会社の活躍が見られないのはなぜか。唯一、新型コロナ治療に有効とされた「アビガン」は抗インフルエンザ剤で富士フイルム傘下の富山化学㈱の製造。新型コロナの効果薬やワクチン開発は大阪大学医学部や、滋賀県立医科大学の名前は上ってはいるものの、我が国を代表する大手製薬会社の名声は無きに等しい。
 我が国の製薬技術は明治初期に始まる。それまでオランダ式を頂点としたが、幕藩体制の終えん新政府の樹立とともに、独仏英各国の薬剤科学が流入し、国民の清潔質素な日常とあいまって驚く程の薬効を得て今日に至る。漢方主流の医薬が、欧州近代医学の出現で驚異的寿命の延伸がもたらされた。
 日本人は医師に対する信頼性が極めて高い国民。江戸期小石川療養所は、徳川吉宗の時代「享保の改革」の一環で、貧窮する庶民を救済する目的に建てられた140年の歴史がある。医師自体は士族階級であり、士族を守るための存在で、階級制度そのものであった。小石川では一般国民の生活を守るために活躍して敬愛の念を持って支えられた。文明開化の頃、医学生としてヨーロッパに留学した森鴎外は軍医(旧士族出身)であり、日本の医療発展にも尽したことで多大の功績を残している。
 日本の医療は医師、歯科医師、薬剤師と患者たる国民の信頼関係、医療格差をなくすための保険制度、古くは明治政府による漢方医学から欧米最新医療技術導入の先取性、薬剤の許認可などの厳格性―――などによって維持されつづけて来た。国内大手製薬各社は、この恵まれすぎた環境の中にあって、本来の使命たる国民の生命を守るという「医は仁術」の気概が希薄になっているのではないか。「コロナ」と対決する姿勢を示せ。ワクチン、効果薬製造に名を上げよ!この非常時の新薬開発は、当然国家の安全保障分野の一角でもある。我が国の技術水準からすれば能力は充分にあるハズだ。
 感染者は大分市の人口とほぼ同じ40万人、亡き人々は6千人に達する状況にある。  (陽)