オリンピック精神とは

 韓国オリンピック選手団は太極旗(国旗)に加え、抗日英雄のシンボルとされる李舜臣朝鮮海軍提督の戦線強化をめざす「檄文」を掲げ、アウェー(日本)での健闘を促す。選手団には「福島産品を食べるな!」と調理スタッフを帯同させて選手の栄養補給につとめる。
 「李舜臣提督」と聞いては、異議がある。文禄・慶長の役に朝鮮水軍を率いて活躍した救国の勇将である。その一方国内政治の党争により対立勢力によって失脚。位を兵卒に落され、「標的」とされる白衣を着せられ白兵戦に投入された。実質的な処刑行為にあたる。陣中で母親の病状悪化を知り、見舞いに駆け付けたことが処罰の理由の1つだった。降格、白衣従軍2回を経て、朝鮮水軍に戻り、名誉を回復して、露梁海戦で「水漬く屍」の生涯を迎えた。彼の勇将は「銃前」と「銃後」の敵に挟まれた戦いを余儀なくされた、悲運の将でもあった。韓国の「救国の将」と称された人々はそんな一面を備えた存在が多い。
 朝鮮戦争で戦死した軍首脳部や戦没後あるいは退役後、太平洋戦で「親日的行為」があったと名誉を剥奪する行為がくり返された。彼らは英雄をその時節、時流や風潮の都合に依り、永眠の墓標から呼び起こす。このご都合主義の評価は、歴史の捏造につながる。
 我々は今、この瞬間に、これまでの人生の全てをかけた若者達に、心よりの応援を捧げればよい。国境、民族を越えた公平公正な目で。オリンピック精神とはそのように学んだ覚えがある。確か57年前に。  (陽)