元別府市長の井上信幸さん(85)は、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する横断幕を、石垣西3丁目の自宅前に掲げた。
横断幕はたて1・5メートル、よこ5メートル。「プーチン大統領に告げる。貴職のウクライナ侵攻は明らかな国際法違反行為です。大儀なき殺りく行為によって、罪なき子どもたちをはじめ多くのウクライナ国民を絶望に追いやっています」とした上で「ウクライナからの即時撤収と心からの謝罪」を求める。さらに「愛国心をもって祖国の防衛にあたる勇気あるウクライナの人々に心より敬意の誠を捧げながら。ウクライナに『春よ来い!』井上信幸」と締めくくっている。
横断幕とともに日の丸とウクライナ国旗も取りつけた。横断幕は旧知の橋本達途サンアート社長に依頼して製作。ウクライナ国旗も橋本さんの紹介で特注、2週間かけてでき上った。
ではなぜ、こんな横断幕を作ったのか。それは幼少期の戦争体験にある。井上さんは別府生まれだが、父親の仕事の関係で小学校2年生まで大阪に住んでいた。昭和20年3月の大阪大空襲では焼い弾が降りしきるなか、防火用水の水を頭からかぶって逃げた。
別府へ疎開する列車は超満員。姫路を過ぎたころ、神戸が空襲にあい、光が外にもれてはいけないと、車内の明りはすべて消された。
別府に着くと母親の在所の亀川温水に身を寄せた。温水の山の上から、日出町豊岡沖に停泊していた日本の小型空母が米軍機グラマンに襲われるのが見えた。大分空襲では空が真っ赤に染まった。
「アパートや学校が爆撃され、逃げまどうウクライナの人々の姿を見て腹が立った。私も戦争を経験しているので、ウクライナ国民の気持ちがよく分かります。戦争はいやだ。こんな残酷なものはない」と井上さんは語った。