「正義」という名の勝利

 ゼレンスキー・ウクライナ大統領は全土の2割が露軍に占領されたと公表した。2月24日のウクライナ侵略でこれだけの「被害」。プーチンによる「言われなき汚名」を着せられた一方的な侵略行為、耐え忍んできたウクライナの勇気とその能力を讃えたい。
 このほどウクライナを支援する47カ国の防相会議が行われ、23カ国が即、具体的な支援内容と実施の特定を公表した。国連緊急総会で加盟193カ国中、141カ国が常任理事国ロシアに「ノー!」を突きつけた。今日で101日となった。現在各国の支援は兵器、装備品の類から、生物化学兵器に対応した装具、医療衛生物品、食糧、直近では武器、戦術に関する人材育成など次々に枠を広げている。
 防相クラスはとくに欧米の場合、退役軍人が主力。計数から物品管理、輸送手段とその日数、装備点検やメンテナンスに至るまで、総合的に物資輸送を戦略、作戦の一部分ととらえて実施しているのが強みでもある。軍が動けば即、国が動くというパワーが加速する。日本は負けているぞ!。湾岸戦争で米軍が多国籍軍をリードした物資輸送、1日平均約2百万トンが陸揚げされた。
 各国支援といえば、当初は「ドイツ」や「国連」の及び腰が目立った。ドイツのメルケル前首相はハンブルク生まれながら、家族で旧東ドイツに移住。ドイツ社会主義統一党の青年部から、カールマルクス大学を経て、ベルリンの壁崩壊後は、東ドイツ最後の政権下で報道官。メキメキと頭角を表わし統一ドイツ初の女性首相となった人。
 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、元ポルトガルの首相で、社会党党首。1990年、ポルトガル領マカオの中国返還を行った人物。2005年まで社会主義インターナショナルの議長を務めた。プーチンに極めて近い主義思想を若い時代に共有した存在が、国際社会への正義の決断を鈍らせたのかもしれない。これは個々人の主義思想を否定するものではない。
 ウクライナの窮状を救うためには、▽NATO対旧ソ連の対抗イメージを払拭▽国連機能の見直しと充実拡大▽経済制裁の実効検証の認識―――など。冷静な対応のくり返しも求められる。
 ウクライナ戦地は、各国が提供した最新兵器の実証実験場となり得る。兵器という国家機密を惜しげもなく提供して、ロシア(プーチン)の暴虐を食い止めようと願う諸国の善意の結晶体でもある。
 幼な子の無残な姿に泣き崩れる母親、老夫婦、ご主人が散歩中背中を撃たれて絶命。拷問によって満たされた血だまり。性的暴行を子どもの目の前で受けた母親。―――哀れみよりも、平和を取り返すエネルギーを共有して、立ち向かう勇気を今一度、再生しよう。言い古された言葉かも知れないが、「正義」は必ず勝つ。ウクライナは他人事ではない!
       (陽)