一歩踏み出す心意気

 友人らと、ある会合で日田市を訪れた。この「いいたい砲台」のテーマは、外交、国政とくに国際紛争が主力。友人は「タマには別の素材を取り上げてみては……」の勧め。短時間滞在ながら日田市について触れてみた。
 当日の会合は午後1時。午前10時半すぎに到着したので、目抜き通リを散策してみた。ご存知「豆田町」。石畳の街並みは、昔懐かしの昭和どころか、江戸期の雰囲気を醸し出している。この豆田町は、江戸時代後期の建造物(商家屋敷、蔵など)が現存し、国の重要伝統的建造物群保存地区。2015(平成27)年に「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」として日本遺産に認定されている。
 街並みは平屋か二階建て。当地はご存知、広瀬淡窓翁の「咸宜園」は階級社会を批判して、平等に教育して頭脳を世に送った。そしてここは「天領」の地。古くから商域は福岡県であり、豪農商の存在が文化遺産を生んだようだ。町屋は瓦ぶきで、大店(おおだな)を示す、木製の盾板、防火壁の「うだつ」も散見できる。士農工商社会にあって商家の隆晶を感じさせる。当地では遅めの朝メシ。ソバ屋でゴボー天ソバ。近くの日本茶屋でデザート。土曜日の午前中だが、人通りも多くなって来た。町全体が湯布院とは一味違った趣きがある。見回すと2~3軒の間口で、土産品、小物や菓子類、食事処が軒を連ね、センベイの店頭はガラスケース(これもレトロ!)に並べられて、美味そうだ!各店とも店を出る際に「よい、ご旅行を…」のかけ声が。洗練されているのには驚く。物形、心までが旅情をかき立てる。
 同行の友人のひとり、竹内孝夫ヤクルト「タフマン」社長は、商工会議所の商業部会長で、自身も商店街活性化に取り組む1人。「こんな街並み、別府に欲しい!よ~し、ヤルぞ!」と意気込む。
 旧来の街並みや建造物を利活用した景観は、愚生の知る限り、日出、杵築、豊後高田、臼杵、佐伯、豊後大野、竹田とある。古来の建造物の外観を残し、内装を近代化した商店は、欧米に限りなくあるが、当時の什器、備品を再生して、活用するのは日本の技術力に負うところが大きい。別府の野口元町「油屋」の主屋は百年を越す。外観内装を大部分残して再生。宿泊施設を備えたカフェとして再スタートした。新築よりもはるかにコストがかかる。
 前述の竹内タフマン社長は、駅前商店街地域で「別府再生」のまず一歩を踏み出したいという。
 そのわずかな一歩が大切。要は志(こころざし)。湯布院は2人の若者が、SPA(温泉療養滞在型施設)の開発として西欧に出向き「バーデンバーデン」「バース」で、研修を重ねて今日へと導いた。「欧米か!」とヤユされた時期もあったという。2人の若者とは溝口薫平氏と中谷健太郎氏のこと。60年に近い前の話だった。人生百年、その6割と思えば、すぐに来る。
 さあ第一歩を踏み出そう!  (陽)