別府大学の藤本明さんが文科大臣賞

第66回毎日学生競書展で
文部科学大臣賞を受賞した藤本明さん
(後ろは祖父の故・荒金大琳氏の書)
文部科学大臣賞を
受賞した作品「君諱宝子」

 別府大学初等教育科1年の藤本明さん(19)がこのほど、第68回毎日学生競書展(毎日新聞、西部毎日書道会主催)で最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。
 国内外から1万1788点の応募があり、最高賞は小、中、高校・大学部門から1人ずつ3人が選出された。規定課題の「君諱宝子」の4文字を書き上げ、のびやかさ、バランスの良さが高く評価された。
 藤本さんは中学生から祖父で書道家の故荒金大琳氏が主宰する書道教室に2歳から通い、祖母と母の元で字を書き、中学生から故荒金氏から指導を受ける。3歳から同展に作品を応募している。毎年、受賞しているが、文部科学大臣賞は初めて。
 故荒金氏のことを「私たちを『孫』として見るのではなく、一人の生徒として自分が研究している雁塔(がんとう)、古典などを見させていただく経験があったので、この臨書とこの臨書の違いなど『こんなに分かっているのに、まだ勉強するんだ』という姿を見てきました」と話した。
 祖父が書いた手本をもとに、一文字一文字と向き合った。祖父からのアドバイスをもとに何度も書き直し、OKをもらっても書き直していたという。
 荒金氏は本賞の新聞発表前日の2月22日、逝去。賞状の名前を書く今年の担当が祖母の節子さんだったが、藤本さんの賞状の名前は、病床で荒金氏が「俺が書く」と言い久しぶりに筆をとって書いたもの。深い愛情がこもっており、一生の宝物となった。
 受賞が決まったときのことを「祖父から『来て』と連絡がありました。いつも賞を取ったときは祖父が教えてくれるのですが、今回は祖父の家に行きました。『おめでとう』と言われハガキを渡されたときはびっくりしました」
 「大琳先生と奥さんの節子先生、そして家族に感謝しています。祖母は小学生の間、ずっと基礎を教えてくれて、書道の楽しさも教えてくれて、書道が好きになりました。祖父からは新しい発見や古典を追求するすごさを見て、自分ももっと勉強したいと思いました。父も母も書道ができる環境を作ってくれて、困ることなく書道ができました。兄も妹も書道をしており、兄は祖父と同じように研究をしています。家族で一緒に書道を頑張っているので、私も刺激を受けていますので、感謝しています」と語った。
 将来について「子どもたちに書道の楽しさを伝えたい。書道は同じ字を複数枚書いても、まったく違う作品ができる。字にも表情がでる。祖父の字は『温かい』印象がありました。母が幼稚園で『書の遊び』をしており、子どもたちが書を書くにつれどんどん笑顔になっていた姿を見てきたので、私も子どもたちに書の楽しさを教えたい。そして祖父が見て恥ずかしくない字を、そして自分なりにどういう作品にしたい、どういう思いを持って作品に挑みたいという気持ちを持って書に向き合って行く。祖父のような温かさがあり、力強さもある作品をめざします」と述べた。
 3月23日に太宰府天満宮で授賞式があり、遺影と一緒に出席した。式では黙とうが捧げられた。