杵築市山香町の「旧志手住宅」

登録有形文化財となる
見通しの「旧志手住宅」
2階の納屋中央部分=写真はいずれも
杵築市教育委員会提供

 杵築市山香町野原にある、「旧志手住宅主屋」が3月15日に開催された文化庁の文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、登録有形文化財(建造物)に登録するように答申があり、官報告示を経て、登録有形文化財となる見込み。杵築市の登録有形文化財は、平成30年の「とまや店舗兼主屋」に続いて、2件目。
 旧志手住宅は、明治26(1893)年に建てられた。生活変容過程が窺える、重要な生活文化史的遺構として「国土の歴史的景観に寄与しているもの」との登録基準を満たしている。
 46代にわたり当地を管理した志手家の歴史と「豊後志手家私記」から、建設年代や費用、地元材の採取地など当時の様子が分かる歴史資料が残っている。当該地を代表する地主階層の普請とも言える「整形六間取り」や「式台玄関」などの一階構造、部材表面の仕上げや折置組と京呂組の構法の混合といった特徴は、近世から近代にかけての材料、道具、技の変容過程を可視化できる技術遺産でもある。また、独特の2階構造で、明治期の養蚕業展開の様子が窺える産業遺構としても評価された。
 現在は、中世やルネサンス期のヨーロッパの楽器を復元・製作する「カテリーナ古楽器研究所」が所有している。