

別府温泉杉乃井ホテル(鞍馬達也総支配人)で、使われなくなった備品を活用したアート作品がスギノイパレス1階に16日から展示されている。
ホテルでは、2019年から大規模リニューアルを行い、1959年に開業した中館を2025年に、1971年に開業した本館を2023年に閉館した。その際、長年ホテルで使用されてきた備品を活用できないかと考え、「廃材再生師」と呼ばれる作家・加治聖哉さんに依頼し、廃材アートに生まれ変わらせた。
自然、知恵、家族愛などの象徴である「オオカミ」をモチーフに依頼。下駄400足、釜めしの蓋100個、敷板400枚、民芸風こんろの木枠240個、木製の座椅子150脚を提供し、それらを使って体長約3・6㌔㍍、高さ約170㌢㍍のオオカミを作り上げた。展示スペースでは触ることはできないが、大人が乗っても大丈夫なほど丈夫にできている。
13日から作業を進めてきた加治さんは、様々な形に切った材料を迷うことなくはめこみ、ビスで次々ととめていった。胴体部分はほとんど座椅子が使われ、毛の一部に下駄を縦に切ったものが使われてアクセントとなっている。今にも走り出しそうな躍動感にあふれた作品に仕上がった。
加治さんは「作品を見ながら『これって、あれじゃない?』と素材を考え、シンプルに楽しんでもらいたい。『またあのオオカミに会いたい』と思ってもらえたらと思う」と話した。
長年、多くの宿泊客らが使ってきたものの、捨てられるしかなかった備品が新たな命を吹き込まれ、リニューアルした杉乃井ホテルで違った形で訪れる人たちを楽しませている。