JR別府駅前広場の手湯に施している竹の装飾(デコレーション)を7月28日、リニューアルしたため、制作者のこじまちから氏(竹藝家、別府竹製品協同組合員)が取材に応じた。
竹のデコレーションの趣旨は、全国から訪れる多くの観光客に「別府は温泉以外にも竹が有名である」という認知を広めるため、別府の玄関口であるJR別府駅の手湯に若手竹工芸家による装飾を施す。主催は竹・ルネサンス実行委員会(岩尾一郎会長)、協賛はJR別府駅と(株)永井製竹(茶重之代表取締役)で、永井製竹が企画、竹の無償提供などをしている。
新しいデコレーションの作品名は「湯のまちの別府」。同作品は2つのパートで構成されている。海側から見ると「別府の街並み」として、山の斜面に立ち並ぶ家や建物をブロック状の竹で見立ている。山側から見たときは、別府の竹工芸で最も特徴的な技術、竹野編組(編み目)により温泉から立ち上る湯気や温泉と人々のエネルギーを表現している。使用しているのはすべて大分県産の真竹。4㍍の長さのものをこじま氏が一本一本手作業で割り、大小の部材を編んだり組んだりしている。竹の編み方は伝統的に使われている「四つ目編み」「六つ目編み」「亀甲編み」「麻の葉編み」「網代編み」を使用。長さ4㍍の1本の竹を長さはそのままで筒を12等分に割ったものも使っている。また交流のある別府市在住アーティストのMAKEY氏(アートクリエイター)がカラフルな花の模様、ユキハシトモヒコ氏(温泉染研究所の染色家)による別府温泉の泉質を利用した「温泉染」を使用している。
完成した作品を前にJR別府駅職員からこじまちから氏に花束が贈られた。その後、記念撮影をした。
こじまさんは「制作は1カ月ですが、構想は半年。竹の本数は1本4㍍換算で30本前後。今回は見る場所によって、2つの表情があり、別府そのものを表現しています。設置しているとき、反響が大きく差し入れをいただいたりしました。作業することで町との一体感や、このスペースを愛していることが伝わりました」。
岩尾会長は「来年する人が困るぐらい良い作品が出来上がった。展示は1年が限界なので、別府の表玄関に竹作品があるのは良い」。
茶代表取締役は「観光客には『別府は温泉』というのが全国で有名。大分県は真竹の生産量が日本一で、別府竹細工は国指定の伝統的工芸品。別府市は竹の町で、川上(竹を切る人、湯釜をする人)、川中(メーカー、竹細工職人)、川下(卸問屋)のすべてが揃っている。竹の町と言いながら町中に竹の作品がない。多くの人に見てほしい」とそれぞれ話した。
今回の作品の設置には、ボランティア約10人が手伝い、27日午前5時から正午、午後8時から翌28日午前1時までかかった。27日に設置しているとき、高齢女性がこじま氏に話しかけており、盛り上がっていた。高齢女性は28日は来れないため、29日に来てから見るのが楽しみと語っていた。