鉄輪がアートに染まる

今回のイベントを紹介する廣川玉枝さん

 混浴温泉世界実行委員会は、個展形式の芸術祭「廣川玉枝inBEPPU」の記者発表を4日午後1時30分、別府市役所5階大会議室で行った。
 「inBEPPU」は毎年、国際的に活躍する1組のアーティストを別府に招聘し、地域性を活かしたアートプロジェクトを実現する個展形式の芸術祭。今年で6年目。
 今年は、最も旬なファッションデザイナーとして国際的に評価され、伝統工芸や工業デザインなど多様な分野とのコラボレーションでも注目を集める廣川玉枝さんを招聘した。これまでファッションやデザインの領域で活躍してきた廣川さんが、別府で新境地を拓く作品制作に挑戦する。
 今回のテーマは「祭」。生命の循環を営む自然のエネルギーや神々、そして祖先に感謝や祈りを捧げる行為。廣川さんは、「祭」を人類が芸術を生み出す根源であるとし、土地の風土や民族性を表象するものと捉えている。別府の山、町、海へとたどりながら、それぞれの場所で創作した神事を行う。また、開催中は鉄輪むし湯の提灯やのれんを廣川さんが手掛ける「スキンシリーズ」で装飾し、火男火売神社や大谷公園で衣装を展示する。
 記者会見では、西田陽一混浴温泉世界実行委員長が「緊急事態宣言が解除され、やっとお客さまの動きが別府に戻りつつあるのかと思っています。inBEPPUがきっかけで、別府八湯津々浦々に活気が戻るようなアートになれば嬉しい」。
 顧問の長野恭紘別府市長は「テーマの『祭』は、無病息災、五穀豊穣と、まさにコロナの悪い運気を追っ払うというような大きな意味合いもあると思います。イベントは不要不急と言われてきましたが、心をしっかりと保ち、みんなで一丸となって暗い雰囲気を払拭していくといったことがこれから大切になるのでは」とあいさつ。
 山出淳也総合プロデューサーが、今回のinBEPPUのテーマなどを説明した。
 続いて、招聘アーティストの廣川さんが「今回の芸術祭は、このような状況ですが『祭』をするべきと感じました。神様の怒りを鎮めるための祭りを創るための芸術祭をする。別府の市民の皆さんと一緒に、祭りを創っていきたいと思った。市民の皆さんの力を借りないと成立しない祭りになっています。ぜひ、積極的に参加して下さい」と述べた。
 会期は12月18日から2022年2月13日まで。定休日は毎週火曜日、および年末年始(12月28日から1月6日)。会場は、鉄輪むし湯、火男火売神社、大谷公園ほか、別府市内各所およびオンライン。
 同時開催として、昨年開催した「梅田哲也『0滞』」を再公開する。NPO法人BEPPU PROJECTが10月、梅田さんの新たな作品体験を提供する書籍を出版に合わせてのもの。日英両言語で体験できる。
 主なイベントは、次のとおり。
 ▽追儺式奉納=12月11日午前10時、ダンサーの湯浅永麻さんが舞う、オンライン配信▽地獄祭神事奉納=12月18日午前11時、ダンサーと市民12人が廣川さんがデザインした衣装を着て、火男火売神社から鉄輪むし湯まで練り歩く▽炎祭神事奉納=2022年2月13日オンラインで公開予定▽博物資料展示=オンラインギャラリーとして廣川さんが収集した資料を公開(インスタグラム@tamaehirokawa_inbeppu)