欧米豪中心にツアー続々と

デンマークから初来日し地獄蒸しを楽しんだリンガードさん一家

 新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振るい、観光地も大きなダメージを受け続けてきた。
 ラグビーW杯日本大会が2019年に開催され、試合会場の1つだった大分県にも、欧米豪を中心に多くの外国人客が訪れた。長期滞在型で消費額も大きい欧米豪の集客へ取り組みを進めていた最中のパンデミックで、政府も海外からの入国を厳しく規制してきた。
 そんななか、豊の国千年ロマン観光圏(会長、日置伸夫別府市観光・産業部長)は、ピンチをチャンスにかえるべく、アフターコロナに備えてきた。結果、規制緩和以降、好調なスタートを切ることが出来た。
 千年ロマン観光圏は、別府市、杵築市、国東市、宇佐市、中津市、豊後高田市、日出町、姫島村の県北部8市町村が連携して、観光振興に取り組んでいる。温泉や神仏習合、世界農業遺産など地域ごとに違った歴史、文化がある魅力あふれる地域。2015年から、欧米豪に興味を持ってもらえるコンテンツづくりに力を入れてきた。
 DMO機能を持つ千年ロマンは、地域と交流し、2泊3日以上の滞在を目指し、着地型ツアーをしっかりやれる組織づくりをしてきた。トレッキングや農村民泊などのパッケージツアーを造成し、「これから売り出す」という時に、コロナが感染拡大。しかし、コロナ禍で観光客を迎えられなくなったことで、各地域の素材を磨き、ガイド研修を重ねた。
 旅行会社と行った勉強会では、海外の旅行客はガイドをしているその人にも興味があり、「この人が言うなら」という気持ちになってもらうことが大切で、コミュニケーションを取りながら、その人の興味に沿ったガイドを臨機応変に行うことの重要性を学び、お互いにガイドする姿を見せ合うことで、気づきがあり、着実にスキルアップを図った。ガイドを「プロ」として育成し、経済の域内循環を図る。現在、ガイド登録をしているのは、34人。
 昨年10月、観光における外国人旅行者の入国規制が緩和されてすぐ、米国ハワイからのサイクリングツアーが実現でき、8市町村すべてを回る8日間のツアーを成功させたのを皮切りに、4月から7月までに国内客を含む81件、551人。国外では、ドイツ、米国、ニュージーランド、オーストラリア、デンマーク、ハンガリー、台湾、香港、ベトナム17件、124人が千年ロマンのツアーを利用した。
 7月27日正午、デンマークからリンガードさん一家4人が来別した。5人の子どもを持つリンガードさんは、奥さんと子ども2人を連れて初めて日本に。旅行会社を通じて、「べっぷ鉄輪地獄蒸しツアー」に参加した様子を取材させてもらった。
 ガイドは豊島桐子さんでこの日は英語ガイドの井出正広さんも同行。はじめに、湯治宿「ひろみや」に行き、経営する坂井美保さんのアドバイスで、肉、野菜などの食材を竹製のざるに好きなように入れ、大黒屋旅館に持っていってそのまま地獄蒸しに。初めて見る地獄釜に驚いた様子だったが、出来上がりを見て「ワオ!」と笑顔に。特製ダレをつけたりして味わった。
 今回の旅行で、3週間かけて東京と九州・四国を訪れるリンガードさんは「日本の本当の暮らしや自然を見てみたかったので、九州を選びました。日本がどうやって戦争へと団結していったのかなど、歴史に興味があります。礼儀を大切にしているところなど、北欧と似ているところがある。他にも、テクノロジーにも興味があります。日本製品に囲まれて生活してきたので」と話した。ガイドに熱心に質問をし、理解を深めていた。
 初めて味わう地獄蒸しには「野菜が甘くておいしい」とみんな大満足の様子で、お腹を満たした後は、鉄輪の町歩きを楽しんでいた。
 欧米豪では、3週間ほどかけて旅行をするのは平均的だという。自然体験や歴史・文化を知るコンテンツや日本人の実生活にも興味が高いという。
 千年ロマンでは他にも「おもと古道トレッキング」「耶馬渓の里山をめぐるサイクリングツアー」「原木シイタケ収穫&農村ランチ」「別府湾漁船クルーズと朝市見学」もあり、ホームページから直接申し込みもあるとか。
 今後も欧米豪の募集型ツアーなどの予定が入っており、コロナ禍でも進めてきた取り組みが実を結ぼうとしている。