「サラビオ」の温泉藻類による画期的製品

水揚げされたヒラメを確認する
濱田茂会長(右)
肉質に良好な変化をもたらした
佐伯産の養殖ヒラメ

 ◇…湧き出る別府の温泉から、画期的な物質を抽出、含有する成分の徹底分析とその効果を検証。人体機能の回復、充実に効能が見られたこの物質は、水産養殖や畜産の世界でも注目を浴びることとなり、大手商社との取り引きで、農水産食品製造の分野でも独自の地歩を固めることとなった。
 研究開発にあたるサラビオ温泉微生物研究所(別府市大字鶴見=濱田茂会長)が新境地に踏み出し、今後の方向性を示した。「別府のお湯は、まさに天与の恵み人々の宝。この別府で温泉によって産み出された新たな温泉の活用、別府への恩返しとして世界に発信していきたい」――と意気込んでいる。…◇

【化粧品からのスタート】
 「サラビオー」の濱田会長は、2011(平成23)年、所有の大字鶴見1356番地に存在する、旧森藩別邸「殿様の湯」から湧き出た湯泉から、藻類(モ)が皮肌の炎症を押さえる効果や老廃物の除去に効果がみられるため、「サラヴィオ化粧品」として商品化に成功を納め、自社製品「RG92」として世に出した。効能については広島大学をはじめ、久留米大、順天堂大との共同研究で特許も15(平27)年に取得した。「温泉藻類から抽出したエキスを含む組織成分、および化粧用成分、炎症性疾患の治療、予防薬ならびに新規微生物」という発明品。化粧品としての効果や、とくにスポーツ選手の筋肉疲労障害の分野でも有力な商品となった。
【水産養殖に参入】
 この商品を研究開発した「サラビオー」のスタッフで水産事業の経験者が、炎症治療に効果があることに着目。養殖分野での導入をめざし、分析を重ね、水産養殖飼料に添加したところ、「健康に育つ」という感想を得た。とくに腸内環境の強化が著しい伸展を見せたことから、実験的に養殖ヒラメの飼料にRG92エキスを添加したところ、稚魚の段階から、育成環境の変化が見られるようになった。実験は大分県佐伯市でヒラメを手がける友永工業㈱の水産事業部で行った。通常養殖は育成の段階で、最終的に約40%が出荷できない。RG92添加の飼料を使用したところ、水揚げが約30%伸び、全体の90%の出荷を誇った。さらに肉質が向上。平均的に一尾500グラムの成魚が750グラムに。また旨み成分の増加により味覚にも著しい向上が確認できた。最大の利点は、温泉藻類より抽出したエキスという自然添加物。水産養殖事業者は個体強化と疾病対策に抗生物質を利用しているが、「RG92」は人体、動植物の生息に影響のない特性が生かされる結果となった。
【別府温泉効能、世界発信】
 この研究成果をもとに21(令和3)年、水産物の飼料として農林水産省に届出が受理され、対象魚類を拡大。九州、四国の養殖事業者が導入。この状況は国内大手商社の目にも留まり、中国国内の一部地域で進出を決定した。また、人類が健全な精神と肉体で長寿時代を迎えるために創設された、愛知県大府市の「国立長寿医療研究センター」の研究グループと、「老化制御」の共同研究を22(令和4)年に開始した。
 水産養殖の分野に止まらず、養鶏、養豚にも次々と問い合わせが舞い込み、すでに鶏肉、鶏卵に飛躍的な育成環境の変化が確認されている。鶏卵の個体増加、鶏肉の質的向上に資する飼料であり、生産個体の「免疫」効果も見られた。「サラビオー」は今後は養豚事業者との連携を更に拡大して、「安心安全な食物の創生は、別府の宝、温泉によってもたらされる」を合言葉に、力強く世界に情報発信をくり返していきたいとしている。